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「ゴーン色」一掃へ集団指導体制 日産次期社長人事 

 次期社長兼最高経営責任者(CEO)に53歳の内田誠専務執行役員を充てる人事を決めた日産自動車は、前会長、カルロス・ゴーン被告と直接、仕事をしていた経営陣からの若返りが大きく進む見通しだ。選考過程では、世代交代を押しとどめようとする動きも社内で出ていたが、独立した指名委は40~50代の幹部3人に日産の前途を託した。ゴーン事件を教訓としたコーポレートガバナンス(企業統治)改革の成果が出た形だが、日産の業績不振は深刻。内田氏を中心とする集団指導体制の真価が問われそうだ。

 「次期トップは山内(康裕最高執行責任者)でほぼ決まりです」

 9月9日に西川広人社長の辞任が決まった後、他社の幹部に対し、ある日産幹部はこう伝え、山内氏の社長就任を後押ししていたという。トップの世代交代が実現すれば年配の幹部に対する退任圧力が強まる。西川氏と2歳しか変わらない暫定CEOの山内氏がそのまま社長に就いた方が、都合がいいという考えを持つ勢力が若返りに反対したようだ。

 しかし、指名委は、取り沙汰されていた候補者の中でも若い内田氏を社長に、アシュワニ・グプタ氏を最高執行責任者(COO)に決めた。内田氏は商社出身のため、日産に入社したのは平成15年で在籍期間は短い。関係者は、このことがトップ就任の障害になると指摘していたが、指名委の豊田正和委員長は、「日商岩井の後、日産、東風(日産の中国法人)と多彩な経験を持っており、今のような難しい時期のリーダーとしてふさわしい」と逆に評価した。

 日産ではゴーン被告が約20年間にわたって社長、会長に“君臨”し、協議で適任者をトップに選ぶようなプロセスは久しく経ていなかった。だが、ゴーン被告の事件の反省から、経営の執行と監督を分離するために今年6月、指名委員会等設置会社に移行。企業統治改革の成果が発揮され、今回の世代交代につながった。

 また、豊田氏は記者会見で、「(副COOに就く関潤氏を含む)3人体制で多様性のあるリーダーシップを発揮することが望ましい」と強調。ゴーン被告の“独裁”を教訓にしたが、集団指導体制は意見の対立などで機能しなくなる懸念もある。3人が協力して業績回復を進め、ゴーン体制からの“真の脱却”を実現できるかが注目される。(高橋寛次)

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