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痴漢「見える化」サービス続々 被害共有アプリや「防止用ハンコ」

 泣き寝入りが多いとされる痴漢被害を「見える化」するサービスや商品の開発が進んでいる。発生場所や時間を匿名で報告し、情報を共有するアプリの配信が始まり、迷惑行為を防止する目的のスタンプの販売も注目を集める。担当者は「痴漢を許さないという意識を喚起させたい」と話す。

 8月からウェブサイトでサービスを開始し、9月上旬に無料アプリを配信スタートした「痴漢レーダー」。スマートフォンの画面で「被害にあった」「被害を見た」をタップすれば、すぐに登録できる仕組みだ。痴漢、つきまとい、盗撮といった種類や発生場所・時間を報告。場所は、位置情報を使うなどしてマップ上に示す。

 4日までに、国内で約980件が登録された。被害件数は地域ごとにリアルタイムでランキング表示される。セクハラなど被害者が声を上げにくい悩みを匿名で相談できるサイトを運営するインターネット関連ベンチャー「キュカ」(東京)が開発した。

 警察庁によると、2018年に都道府県の迷惑防止条例に違反した痴漢の摘発件数は2777件だった。盗撮やのぞき見、強制わいせつに該当するものは含まれていないので、実際の被害者はもっと多い。アプリは、こうした表面化しにくい痴漢被害を明らかにし、警察や鉄道会社などに対策を促すことが狙い。

 同社の片山玲文さんは「被害のショックでフリーズして、通報を諦めている人は多い」と指摘。代表の禹ナリさんは「被害報告が多い駅に監視カメラを設置するよう鉄道会社に求めるなど、具体的な防止対策につなげたい」と話している。

 文具メーカーのシヤチハタ(名古屋市)は「迷惑行為防止スタンプ」を公式オンラインストアでテスト販売。8月下旬に用意した500個が約20分で完売した。インクは太陽光や照明の下では無色透明だが、付属の特殊ライトを当てると手を広げたマークの印影が浮かび上がる。

 痴漢被害に遭ったときに安全ピンを使って撃退する方法がインターネット上で議論になり、同社は抑止に役立つスタンプの開発を進めていた。今後、利用者の声を基に、本格的に販売するかどうかを検討する。広報担当者は「迷惑行為をなくすために、どう貢献できるか。『痴漢を許さない』という意識が広がるきっかけにしてほしい」としている。

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