幕末から続く創業150年以上の老舗「わたしん」(千葉県旭市)。布団や枕など寝具の販売を通して、良質な睡眠と健康で豊かなライフスタイルを提案する「眠りの専門店」だ。創業家6代目の片山慎一社長(48)は「眠りは、食事や運動と同じくらい心身の健康に大きな影響を及ぼす大切なもの。一人一人に合った眠りを提案し、地域の健康寿命を延ばすお手伝いができれば」と語る。
創業は1866(慶応2)年。綿花の栽培農家だった片山定吉が布団綿の製造と販売を始めた。明治中期に国産綿の栽培が衰退すると、布団を仕立てて売る業態に移行。戦後は卸も始め、売り上げを大きく伸ばした。高度経済成長期には合成繊維の普及などに伴い、木綿綿の卸が頭打ちとなった。そこで小売り専業に方針転換し、1970年代には県内の銚子市や木更津市などへの出店を加速させた。
社長自ら資格取得
80年代後半は、ただ商品を並べるだけでは売れない時代に。そこで元号が平成に代わった89年、当時の勲社長(現会長)は「健康元年キャンペーン」と銘打ち、健康をテーマにした無圧布団や羽毛布団などの商品の提供とアフターフォローに力を入れる新たな営業戦略を打ち出した。
2008年に社長に就任した慎一氏は「質の高い眠りを通じて地域のお客さまに健康でやすらぎのある、幸せな未来を提供する」「100年先も地域社会に貢献する会社を目指す」といった経営理念を社員らとともに作り上げた。
人生の3分の1は睡眠ともいわれる中、「眠っている時間をないがしろにしている人が多い。もっと大切に使ってもらいたい」と片山社長。そこで訴求する「質の高い眠り」の提供については、「まずは一人一人に合った眠りを提案すること。そして商品をお渡しした後にしっかりとサポートする。この2つを社員が“眠りの専門家”としてやっていくことで実現させたい」と力説する。
同社では片山社長をはじめ社員十数人が、日本睡眠科学研究所が認定する民間資格「スリープマスター」を取得し、眠りの専門家としての知識と技術、経験を積み重ねている。
合うまで枕を調整
13年には茨城県神栖市に県外初の支店を出店。店舗近くの本拠地で活躍するサッカーJリーガーが同店のオーダーメードの枕やマットレスを購入したのをきっかけに、口コミで同僚の選手にも評判が広まったという。「オーダーメードの枕は、購入後もその人にフィットするまで何度も調整できる。選手からは、ぐっすり眠ることができて、試合で高いパフォーマンスを発揮できるとの声をいただいた」と片山社長は手応えを語る。