高論卓説

「リブラ」の脅威と中国 国際通貨覇権をめぐる争い (1/2ページ)

 貧しくて銀行口座を持てないUNBANKな人たちにもスマートフォンを通じて簡単で安価な金融サービスを提供したい。高尚な理念を表看板に登場した米フェイスブックが主導するデジタル通貨リブラ。規制当局や既得権益者からの反発は強く、米国では金融当局が通貨発行主体となるリブラ協会に参画すると意向を表明した企業に対して法令順守体制の確認などを非公式に要請したようである。そうした圧力のせいなのかどうか、米国のインターネット決済大手のペイパルは4日、リブラ協会への参加を見送ると発表した。ペイパルはリブラ協会の創設メンバー28社のうちの1社だった。同様に協会の創設メンバーであるビザ、マスターカードなども参加を見合わせるという。リブラの前途は容易ではない。

 一方でリブラ発表の刺激を受けて、イングランド銀行のマーク・カーニー総裁は、多くの国の支持の下、ドルと人民元を含む信頼できる通貨バスケット「合成の覇権通貨」の議論を提唱している。

 トランプ米大統領が「アメリカ・ファースト」を唱え世界の面倒はもう見ないという。また統計数値からも米国経済が突出した時代は終わったのだから、いつまでもドルに過剰に異存する状態は再考の余地があるというのだ。通貨のデジタル化はよい機会であると考える。

 既存のドルがあり、そこに民間デジタル通貨リブラが登場、これに対して主要通貨バスケットによる新しいデジタル覇権通貨をと議論は複雑化しているが、ここにきてその動向が際だってきたのが中国だ。

 中国は、「リブラは決済システムと国家通貨に対して脅威となる」ときちんと正面から認識して、デジタル人民元発行計画を加速している。むしろリブラが震源となった今回の通貨のデジタル化騒動を奇貨として捉えて、欧米にはない強権的な統治制度とその卓越したテクノロジーを駆使して、人民元をより強い通貨にしようとしている。

 中国では既にアリペイやウィーチャットなどの決済が普及、これらは最終的にあくまで銀行口座の中で決済されるが、中国人民銀行が発行しようとしているデジタル人民元は銀行口座に依存せずに決済されることになる。まさに現金の交換と同じで、個々のスマホあるいは口座に収納されるデジタルな現金を発行しようとしているのだ。

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