プロジェクト最前線

出題を最適化、COMPASSのタブレット教材「キュビナ」 (1/2ページ)

 つまずきの原因をAI解析 出題を最適化

 人工知能(AI)を活用した教育教材が活況を呈する中、COMPASS(東京都品川区)が提供するタブレット端末教材「Qubena(キュビナ)」が教育関係者から注目されている。間違いの原因をAIが解析し、一人一人に最適化された問題を出題することや、教員向けのきめ細やかな学習管理ツールを提供することで、授業の進捗を効率・短縮化する。削減できた時間を、創造力や表現力を身にする学びに振り分けるという教育モデルを確立した。

 個々の学習到達度を把握

 開発のきっかけとなったのは2011年、米シリコンバレーで起業した同社の神野元基CEO(最高経営責任者)が、AIやITの技術に触れたことだ。特に45年に到来するとされるシンギュラリティーに関心を持ち、最も影響のある今の子供たちのことを考えたという。帰国後、東京都八王子市内で学習塾を始め、自らの理想を追い求めた。

 だが、塾生徒や保護者らは成績の向上に追われて、未来の話に目を向ける余裕がなかった。そこで、「学校教育をより効率に学ぶことができれば、余った時間で未来を生き抜く力を育てることができる」(神野さん)と考え、14年春からAI教材の開発が始まった。

 教材では、生徒の解答からつまずいている分野を発見し、弱点を補う問題を出す、という手法を採用。個人の学習到達度を把握した熟練の講師でしかできないが、これをAIに代替させようとした。

 15年に完成したキュビナの特長は、生徒が解いた問題の解答や解答時間、正答率などのデータが収集・分析され、教員向けの学習管理ツールで瞬時に確認できることだ。家庭学習の状況も把握できるため、適切な学習指導や成績評価ができる。教師は、授業や宿題を準備するための時間をキュビナに任せるため、授業改善などの研究時間に充てることができる。生徒にとっては教師からの適切な助言を受けて信頼感が高まり、学習意欲の向上につながった。

 創業時からのメンバーで問題作成を担当する、木川俊哉未来教育部長は「教科書なら1ページで教えている内容でも、生徒がどこでつまずいているのか知るために数十問の問題をつくった」と説明した。1学年の数学の参考書で約4000問ぐらいの問題があるが、キュビナは倍以上の問題があるという。

 タブレットに手書きで記入するスタイルにもこだわった。数式を読み取るための最新技術を採用。生徒の書いた文字の乱れをどこまで容認するかなど、問題を解く上でストレスにならないよう工夫した。文章問題だけでなく、作図やグラフをつくることが総合的にできるアプリ教材は少ないという。

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