サービス

地方百貨店、存続懸け積極策 テナントに競合業態、市役所出店も

 閉鎖が相次ぐ地方の百貨店で、生き残りを懸けた挑戦が目立ってきた。競合する業態のアウトレット店をテナントとして誘致したり、かつて遊園地だった屋上をイベント広場として活用したりと、人口減少に苦しむ中で集客力を高めようと工夫を凝らす。

 「アウトレットができたと聞いて来た」。9月下旬、青森県弘前市の中三弘前店を訪れた20代女性は、市内に住むがこれまで同店で買い物をすることはあまりなく、服は仙台市まで行くか、インターネットで購入することが多かったという。「好きなブランドの商品を買えた」と満足げだ。

 同店は8月、店内にアウトレットモールをオープンさせた。全国初の試みで、若年層の取り込みを狙う。木村中社長は「地方、中心街、百貨店の衰退に対する挑戦として、旧態を壊すくらいの気持ちで始めた。アウトレットのない隣県からの集客も期待できる」と意気込む。

 広島市の福屋八丁堀本店は、かつて遊園地としてにぎわった屋上を活用する。子供には絵本の読み聞かせ、大人にはヨガ教室など、幅広い年代を対象とした参加型のイベントを定期的に開いている。

 2016年7月の屋上改装オープンからプロジェクトを担当した同店の月山淳一さんは「店全体に若い買い物客が増え、地域住民とのつながりも深まってきた」と手応えを感じている。

 栃木県栃木市では14年、6階建ての市役所本庁舎の1階に東武百貨店が出店した。食料品が中心で、ワンフロアのため化粧品や洋服の売り場は小さいが、役所帰りの市民や職員ら平日の来店客が多く、売り上げは安定している。

 庁舎は、11年に閉店した福田屋百貨店旧栃木店の店舗跡だ。旧庁舎の老朽化に悩んでいた市は、建物譲渡の申し出を受け、改修して移転した。閉店後に周辺の市街地の人通りが少なくなったことなどから東武を誘致。出店により、周辺が再び活気づいた。

 富国生命投資顧問の日比勝巳チーフアナリストは「消費者のニーズは『モノからコト』へ変わってきており、行けば何か楽しめる場所であることが重要。成功している店は地権者や自治体と一緒に街づくりを進め、人が集まる工夫をしている」と分析する。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus