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「その恩にこたえないのは不義理」阪神大震災の恩返し、台風被災者に無償製品交換

 地震や巨大台風などによる自然災害が相次ぐ中、キッチンや浴室などの住宅設備製造を手掛けるサンワカンパニー(大阪市北区)が、被災した顧客に対して無償で製品を交換するサービスを続けている。同社は、平成7年の阪神大震災で経営危機に陥り、支援を受けて立ち直った経緯があり、同社の山根太郎社長(36)は「自分たちも助けてもらって今日がある。その恩にこたえないのは不義理」と強調。今月発生した台風19号で被災した顧客にも「ぜひ利用してほしい」と訴えている。(黒川信雄)

 山根氏の父で創業者の幸治氏(故人)が社長だった時代。阪神大震災で神戸市内にあった倉庫が破壊され、倒産の瀬戸際に追い込まれた。

 倉庫には、当時の年間売り上げに匹敵する規模のタイルが保管されていたが、屋根が破損し出荷できなくなった。そんなとき、窮状を知ったイタリアのメーカーは、全額無償で同じ商品の提供を申し出てくれ、さらにドイツの航空会社も無償で日本に空輸してくれた。納入先のデベロッパーも期限を遅らせてくれ、「首の皮一枚で、会社の経営が維持された」(山根氏)という。

 これを機に、自然災害の被災者を支援したいとの思いから、同社は23年の東日本大震災以降、大規模な自然災害のたびに無償交換サービスを提供してきた。

 多くの住宅設備機器メーカーは災害時に無料点検をしたり、一部の修理を無料で行ったりしているが、製品交換まで手を広げたケースは珍しいという。

 これまで26件の交換利用があり、累計で1千万円ほどの費用がかかったが、「直筆でお礼の手紙をいただいたり、なかにはショールームにスイカを届けてくれた方もいた」(山根氏)と好評という。

 関東、東北で甚大な被害を及ぼした台風19号で被災した顧客に対しても、無償交換サービスの提供を始めた。山根氏は「社会で必要とされる企業になれるよう、可能な限り努力したい」と話す。

 同社では、無償サービスについて、ホームページ上で告知しているほか、営業マンが工事を請け負った工務店に直接伝えるなどして、周知を図っている。

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