スポーツbiz

早明戦チケットが手に入らない ラグビー人気の余波から新ビジネス想像

 いつもならまだ手に入るはずの大学ラグビーの早明戦、12月1日、東京・秩父宮ラグビー場で開かれる早稲田大学対明治大学の試合の入場券が完売だ。関東ラグビー協会のホームページをのぞくと、当日券の販売はないと告知されていた。インターネットの「譲りますサイト」で入手するか、あきらめてテレビ観戦とするか、思案投げ首である。(産経新聞客員論説委員・佐野慎輔)

 「最も偉大な大会」

 これもまた南アフリカの3度目の優勝で幕を閉じた「ラグビーワールドカップ(W杯)2019」人気の余波といっていい。嫌な気持ちではない。ラグビーへの注目が高まり、新たなファンが増えたことを素直に喜びたい。

 増えたファン、大きな注目をノックオンで落としてはならない。来年1月12日開幕のジャパンラグビー・トップリーグや7月に予定される日本国内でのイングランド戦、11月にアイルランドやスコットランドと戦う英国遠征。そして21年秋に照準を絞るプロリーグ開幕にまで、うまくパスをつないでいければトライへの道は開ける。

 優勝候補アイルランドを破った直後、小欄は「ラグビー初心者こそ大切に」と書いた。森重隆会長、清宮克幸副会長ら日本ラグビー協会幹部は百も承知である。「いまが正念場」だと…。

 国際統括組織ワールドラグビー(WR)は09年9月、日本を19年大会の開催国に選出したとき、懸念を隠さなかった。アジア初をうたう日本の熱意にかけてはみたが、「伝統のティア1国以外」での開催に半信半疑であったように映った。

 杞憂(きゆう)だったことは、WRのビル・ボーモント会長の総括会見が証明する。「最も偉大な大会として歴史に残る」と。台風の影響で3試合が中止されたが、45試合の入場者総数は170万4443人、1試合平均3万7877人。チケットは販売可能な座席の99.3%にあたる184万枚が売れた。初のベスト8となった日本代表の躍進こそ最大の要因である。その日本戦をきっかけに試合の面白さを知り、国籍に関係なく代表選手を選ぶグローバル性への理解も進んだ。「One Team」での戦い、日本流の「ノーゲーム精神」などラグビーの本質への共感も広がった。

 ファンゾーンに商機

 観客の国を超えた熱烈な応援や関係者の献身は外国の選手や訪日客の心を動かし、競技場内外に交流の輪という“副産物”も産んだ。台風で釜石での試合が中止になった翌日、カナダ選手による土砂を取り除くボランティア活動は象徴といえよう。

 そして開催12都市に16カ所設けられたファンゾーンに約113万7000人、過去最高の人出があった。開催都市の中心部のホールなどに大型ビジョンを設け、全試合が中継された。ご当地グルメや出場国の名物料理をビールとともに味わい熱戦を語り合う。開催自治体やスポンサー企業、出場国などの情報も入手できて入場無料、気軽に利用できる場は大歓迎された。このファンゾーンこそスポーツ観戦のあり方を変える新しいファクトでは、と注目している。

 日本代表が出場するサッカーW杯やオリンピック・パラリンピック、競技ごとの国際大会などではパブリックビューイングが行われている。しかし、ファンゾーンは単に共同の試合観戦の場ではない。

 食の供宴に物品販売、情報提供などビジネスの匂いが漂う。主催のWRに組織委員会、開催自治体も加わったスケール感と言い換えてもいい。スポーツ初心者をも巻き込み展開していけば新たな観戦ビジネス、地域創生にもなると考えるのだ。

                   

【プロフィル】佐野慎輔

 さの・しんすけ 1954年生まれ。富山県高岡市出身。早大卒。産経新聞運動部長やシドニー支局長、サンケイスポーツ代表、産経新聞特別記者兼論説委員などを経て2019年4月に退社。笹川スポーツ財団理事・上席特別研究員、日本オリンピックアカデミー理事、早大非常勤講師などを務める。著書に『嘉納治五郎』『金栗四三』『中村裕』『田畑政治』『オリンピック略史』など多数。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus