講師のホンネ

不登校は終わりじゃない ピンチをチャンスに変える生き方を

 近頃、心の琴線に触れることがよくある。文部科学省の問題行動調査によると、不登校児童生徒数は14万4031人。小学生184人に1人、中学生30人に1人という割合となっている。子供の数は減っているのに不登校になる子供の数は増えている。(中村経子)

 これを聞いて眉をひそめる読者諸兄姉も多いと拝察する。しかし身の危険を察して回避する行動は人間の生存本能だ。全ての子供にとって学校が安全な場所でなくなっていることを危惧したい。

 不登校の問題が専門家につながるのは、たいてい欠席が長く続きすっかり身動きがとれなくなってからのことが多い。「前兆」とおぼしき出来事があったとしても、その段階ではなかなか相談につながらない。カウンセリングという営みに対する印象は基本的にネガティブとなる。それこそ、恥と考える風潮もいまだにある。

 不登校に陥る子供はまじめな頑張り屋が多い。誰にも頼らず、自分だけでなんとか解決しようと考えてしまう。また、その家族も同様にまじめで頑張り屋である。相談に訪れる親は必ず「力ずくでも学校に連れて行った方がいいのか、それともそっとしておく方がいいのか」と問う。なぜか二択なのである。焦っているから視野が狭くなる。

 カウンセリングでは、一つずつ日々の出来事を吟味する。否定はしない。4年間の不登校により字が書けなかったある小学生がいた。初めて会ったときの鋭いまなざしを今もよく覚えている。萎縮し、警戒していた。カウンセリングを開始して7カ月後、「先生みたいに字がスラスラ書けたらいいな」と語り、猛練習を始めた。あれから10年。現在は専門学校に通っていると聞く。

 不登校の背景に家族の疲弊が垣間見えることもしばしばある。親の転職がきっかけで事態が好転したケースもある。全ての事例にあてはまるわけではないので早合点は禁物であるが、果たして働き方改革は家族の問題の解決に寄与するだろうか。

 不登校ともう一つ増えている現象がある。若い世代の自殺である。自ら意識をやめることが苦しみを止める唯一の手段と考えてしまうのかもしれない。生きていれば何度でもやり直せる。ピンチをチャンスに変える生き方を伝えられる大人がもっと増えてほしい。

                   

【プロフィル】中村経子

 なかむら・のりこ 1974年大阪生まれ。兵庫在住。臨床心理士、スクールカウンセラー。学生時代に不登校児の支援に関わったことを機に心の専門家を目指す。相談業務の傍ら、不登校、いじめ問題などの研修・講演活動を精力的に行う。第8回全国・講師オーディション最優秀グランプリ。

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