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アサヒの小路CEO、異例の2兆円超えのM&Aでビール世界3強狙う

 アサヒグループホールディングス(GH)の小路明善社長兼最高経営責任者(CEO)は2016年3月の社長就任以降、国内ビール業界としては異例の2兆円を上回る規模のM&A(企業の合併・買収)を決めた。最短では約1週間で意思決定するなどスピーディーな経営で、時価総額を2倍以上に増やしビールの世界3強入りする姿を描いている。

 時価総額2.6兆円

 世界最大手アンハイザー・ブッシュ・インベブ(ABインベブ)から約1兆2000億円で豪州事業を買収すると7月に決定したことで、アサヒGHの攻めの姿勢もいったんは落ち着く。買収で有利子負債が膨らむ見通しで、当面はその返済が優先されるためだ。しかし、小路氏はブルームバーグのインタビューで、今も世界中で買収候補の情報収集を続けていると明かした。

 企業には緩やかな成長だけでなく、「階段を上がるように、ある一定の期間にどんと上がる」ような非連続な成長が必要で、「M&Aを通じてでなければ非連続な成長はできない」との考えが背景にある。国内、欧州、豪州の3拠点が拡大後、財務状況を見て良い対象があれば、他のエリアやカテゴリーにも拡大を続けたいとの考えを示した。

 アサヒGHの時価総額は現在約2兆6000億円。ビール会社で世界2位のオランダのハイネケンの時価総額は現在約6兆4000億円と遠いものの、将来的にはハイネケンの規模まで増やすことを目指しているという。

 15年にABインベブが同業2位の英SABミラーの買収を決定。アサヒGHは、ABインベブが買収後の再編で売り出した複数の欧州事業を相次いで取得した。豪州では、ABインベブが傘下のビール会社カールトン&ユナイテッドブリュワリーズ(CUB)の上場を断念した7日後に、CUBを約1兆2100億円で買収すると発表した。

 小路氏は就任当時と買収を複数案件こなした今では、見える風景は「全然違う」と話す。欧州事業の買収以降、海外の潜在的な買収候補や証券会社からの案件の持ち込みが絶えず、ABインベブのカルロス・ブリトCEOとも電子メールで直接やり取りする仲になったという。

 海外で5割超稼ぐ

 海外のビール事業では買収に2兆円以上を投じたことで売り上げが倍増し、16年12月期に16%だった海外売上高比率は、18年12月期に34%まで上昇した。20年4~6月期以降にCUBが加わることで5割を超える見通しだ。

 欧州事業の買収で現地市場に足掛かりを得たことで、英国での「スーパードライ」の販売は大きく成長。20年1月をめどに「スーパードライ」「ピルスナーウルケル」など高級ビールの海外販売を手掛ける会社をロンドンで設立し販売を統括する計画だ。

 アサヒGHにとって課題となるのは大麻成分入り飲料の扱いだ。米国やカナダなどで合法化が進むものの日本では理解が得られにくいためだ。

 英ユーロモニター・インターナショナルの酒類産業統括マネジャー、スピロス・マランドラキス氏は、大麻を原料にした飲料は現在最も注目の集まる分野の一つで、アサヒGHが目標に据えるハイネケンも積極的に取り組んでいると指摘する。小路氏は大麻成分を含んだ飲料の発売について「難しい」との考えを示した。(ブルームバーグ Grace Huang)

                    

 小路氏の略歴 長野県生まれ。青山学院大法学部卒業後、1975年にアサヒビールに入社。80年から10年間労働組合の専従として労使関係の交渉に携わった後、人事戦略部長、飲料事業担当執行役員、アサヒビール社長などを歴任。2016年3月にグループ社長兼最高執行責任者(COO)、18年3月に社長兼CEOに就任した。67歳。

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