ゴーン逮捕1年

ナカニシ自動車産業リサーチ 中西孝樹代表「ゴーン体制の総括置き去り 新経営陣は明確なビジョンを」

 前会長のカルロス・ゴーン被告の「独裁」が指摘されているが、日産自動車にはそれを支えた人、組織、文化があったはずだ。しかし日産はこの1年、そういったことを総括せず、事件についてゴーン被告は「絶対悪」、西(さい)川(かわ)広人社長(当時)ら経営陣は「善」という構図に帰するだけだった。ゴーン体制の問題点や背景は何だったのか、という大切な議論を置き去りにした結果、コーポレートガバナンス(企業統治)改革も事業改革も、中途半端になっている。

 事業改革でいえば、日産が打ち出した米国での販売奨励金抑制や新車投入までのサイクル短縮などは、他の自動車メーカーもやっているいわば「当然のこと」で、実行したから生き残れるというものではない。その上で何をするかが重要だ。新経営陣はまず、「どういう会社になりたいのか」という明確なビジョンを示す必要がある。

 ゴーン被告が去った日産は、1980~90年代に業績が落ち込んだ頃に戻ったかのようだ。混乱の長期化で官僚体質が復活し、事なかれ主義や社内抗争がまかり通っている。この状況で、抜本的な改革を断行できるかというと心許ない。

 日産が再生するには、仏ルノーなどとの企業連合の中にどういう可能性があるのかという議論を突き詰めなければならないが、そのプロセスが欠けている。また、日産にとって極めて重要な米国事業でシナジーを出せる、新たなパートナーも必要だと思う。それを探すにも、ルノーとの関係修復が前提になる。

 西川氏の社長時代は、体制の“延命”を優先したためか、思い切った改革を打ち出せなかった。不信感からルノーとの対話も途絶えていたようだ。新経営陣に代わり、ルノーに対して融和姿勢で臨めるのは前向きな材料といえる。(談)

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