楽天が運営するクレジットカードとスマートフォン決済で一時的に利用できなくなる不具合が立て続けに発生した。金融以外にも主力のネット通販や携帯電話事業でも相次ぎ問題があらわになっており、市場では「スピード重視でやっているが、あらも目立つ」（アナリスト）との厳しい見方も出ている。
カードとスマホ決済の不具合について関係者は「直ちに業績や株価に影響するものではない」とみる。ただ、金融関連のフィンテック事業は楽天の稼ぎ頭。スマホ決済ではサービスが乱立し競争が激化する中で信頼を損なえば、中期的に影響が生じる懸念がある。
楽天では１０月に開始予定だった携帯電話の本格サービスを基地局整備の遅れなどで来春に延期。利用者を絞った試験サービスでも当初不具合が生じた。ネット通販では購入額が３９８０円以上になれば配送料を来年３月から無料にする方針を打ち出したが、配送料を負担する出店者が反発。組合をつくり、楽天に対抗しようとする出店者もいる。
一連の問題について、準備や根回しなどが十分でなく「拙速さや見通しの甘さが散見される」と指摘するアナリストもいる。一方、楽天は「それぞれ事情が違うが、解決に最善を尽くす」（広報部）という。
ＩＴ業界ではヤフーを運営するＺホールディングスとＬＩＮＥが経営統合で合意し、楽天を抜いて国内最大のＩＴ企業が誕生する。楽天の今後の対抗策に注目が集まるが、まずは主力事業でくすぶる問題を解決し、足場を固めることが先決となりそうだ。（万福博之）