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海運、排ガス洗浄装置導入推進 各社が硫黄酸化物の排出量削減目指す

 2020年1月から、全世界の船舶燃料をめぐる環境規制が大幅に強化される。海運業界では、環境に配慮した燃料使用に向けた対策が進む。その一つとして、現在利用されているC重油を洗浄して使う装置を導入する手法があり、海運各社は取り付け工事を進めている。

 規制強化後も利点

 国連の専門機関「国際海事機関(IMO)」が定めている船舶燃料に含まれる硫黄酸化物の制限について、現行の3.5%以下から0.5%以下に引き下げられる。これを受け、海運業界は主に3つの対策を進めている。(1)硫黄酸化物0.5%以下の「適合燃料」への切り替え(2)液化天然ガス(LNG)燃料の使用(3)重油を洗浄する「スクラバー装置」の導入-だ。

 スクラバー装置は、硫黄酸化物を含む排ガスに海水などの洗浄水を霧状に吹きかけ、その硫黄分を除去する。装置は、大きいもので横幅2メートル弱、高さ約10メートルに及ぶという。規制強化後も、現在使われている安価なC重油を使うことができる利点がある。一方、1台10億円超の投資が必要となるとの試算もある。

 船舶用の排ガス洗浄装置は、弱アルカリ性の性質がある海水域で活用されるものと、パナマ運河や河川域、アメリカ五大湖など、水質が非アルカリ性となる淡水域を航行する際に用いられるタイプがある。このほか、両方の機能を併せ持ち、航行する水域によって切り替えができるハイブリッド型があり、計3種類に分けられる。

 主に海水域で使用され、海水で排ガスを洗浄した後、そのまま船外に排水できる機能を持つのが「オープン・ループ」と呼ばれる装置だ。

 この装置の仕組みを説明すると、エンジンから排出される硫黄酸化物を含むガスが、ガス管を通ってタンクに流れる。タンク内には別の海水管が通り、船外からポンプでくみ上げられた海水が霧状に吹きかけられる。弱アルカリ性の海水に含まれる炭酸水素塩と炭酸塩が、排ガスに含まれる硫黄酸化物と中和反応を起こし、硫黄酸化物が除去される。海水は排出が許される特定域で排水され、硫黄酸化物が除去された排ガスはタンクから煙突を通って外気に排出される。

 淡水域で使われるタイプは、「クローズド・ループ」と呼ばれる。オープン型と同様に硫黄酸化物を含んだ排ガスがタンクに流れる。その後、クローズド型では、アルカリ性の中和剤を用いた洗浄水が霧状に散布され、中和反応を起こして排ガスに含まれる硫黄分が除去される。

 その後、タンク内に残った硫黄酸化物を含んだ海水は、遠心分離器などを用いて海水と煤(すす)などの生成物に分離される。生成物は液体廃棄物用に装備されたタンクにたまり、海水は船外へと排出される。

 国土交通省は、排ガス洗浄を施した排水による、海洋生物や水質などに対する影響について調査を実施。検証の結果、海洋環境への影響については「短期的にも長期的にも著しく低い」と結論付けた。

 郵船は70隻に予定

 日本郵船は順次搭載を進めており、計約70隻の運航船に導入するとしている。商船三井は22年までに計100隻に搭載する予定だ。

 規制強化の背景には、船舶の排ガスに含まれる硫黄分などによって、呼吸器疾患のような健康被害への影響を防ぐ狙いがある。海運各社の規制対応は、海洋から陸上に至るまで幅広い効果が期待される。(岡田美月)

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