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遠隔医療の負担スマホで軽減 患者情報共有、緊急時の治療迅速に

 僻地(へきち)の病院から都市部の医療機関への救急搬送時に、医師がスマートフォンで患者の情報を共有できる遠隔医療システムの導入が広がっている。詳しい容体が事前に分かり、到着から治療開始までの時間を大幅に短縮できるためだ。医師の負担軽減にもつながるが、設備投資が必要でコスト面では課題も残る。

 アプリでデータ運用

 「島外の専門医と連携すれば少ない人手を有効に使える」。北海道奥尻町の国民健康保険病院の竹下和良院長は、こう強調した。消化器科の常勤医2人が、あらゆる患者に対応してきたが、今年8月に函館市立病院と患者の検査データをスマホで共有できる医療用アプリの運用を始めた。

 これにより搬送した患者が市立病院に着いて手術室に入るまでの時間は、従来の2時間以上から最短で30分程度に。データを見た専門医が搬送不要と助言して島で治療を続けられた例もあり「患者の負担も減った」。

 アプリは東京のベンチャー企業「アルム」が2014年に開発した「Join(ジョイン)」。チャット機能付きの画面で、磁気共鳴画像装置(MRI)やコンピューター断層撮影(CT)検査の画像を共有できる。データは外部サーバーを通じ情報共有する「クラウド」に一括保存され、一定期間が過ぎると自動で消去。スマホ本体には保存できない仕組みだ。

 課題は導入コスト

 同社によると、19年10月末時点で国内の約300の医療機関が導入。開発の狙いは脳卒中など治療に緊急性を要する患者の救命にあったが、最近は医師不足の地域を中心に日常的な相談にも使われるなど、用途が広がっているという。

 和歌山県は今年4月、全国で初めて県内の主要な13医療機関を「Join」で結ぶシステムを始動。アプリ上で医師を専門ごとに分け、脳卒中が疑われる患者ならば頭部のCT画像を脳神経外科のグループで共有する。

 救急時のみの使用だが、スマホは画質が鮮明で読み取りやすく、県医務課の担当者は「普段から多くの患者を受け入れている病院の働き方改革にもつながる」と話す。

 ただ、コスト面では課題も残る。院内のCT検査の画像などをスマホで送受信するには、導入時に病院のシステムを「クラウド」につなぐ工事が必要だ。接続後も毎月利用料金がかかる。

 だが現行の診療報酬制度では、院外の医師に助言を求める際にスマホを使っても診察料の上乗せはできず、助言する側の医師にも報酬はつかない。

 情報通信技術(ICT)を用いた医療に詳しい旭川医科大病院・遠隔医療センターの守屋潔技術専門員は「瞬時の情報共有で必要な機器や人手を確保でき、救える命が増える」と、診療報酬制度に組み込むよう求めた。

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