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次世代スパコン「富岳」初出荷 理研向け 「世界一の実用性」目指す

 理化学研究所の次世代スーパーコンピューター「富岳」を構成する計算機(筐体(きょうたい))が2日、製造元である石川県かほく市の富士通子会社「富士通ITプロダクツ」から、富岳が設置される神戸市の理化学研究所計算科学研究センターに向けて初めて出荷された。来年6月ごろまでに約400台の計算機が順次搬送される予定で、2021年の運用開始に向け、実用性の高さに注目が集まっている。

 富岳は今年8月に7年間の運用を終了したスパコン「京(けい)」の後継機で、理研と富士通が共同開発。国費による開発費は1100億円の見込みで、神戸市のポートアイランドにある同センター内の京の跡地に設置される。この日、初出荷された富岳の計算機は6台。石川県の谷本正憲知事らによるテープカットの後、計算機が積み込まれた大型トラックが神戸へ出発した。

 京の約100倍のアプリケーション実行性能を持つ富岳は、富士山の裾野のように、より幅広い分野での活用を想定している。京が達成した「世界一の計算速度」よりも「世界一の実用性」を目指し、アプリの開発しやすさといった「使い勝手のよさ」を追求しているほか、人工知能(AI)やビッグデータへの活用も拡大。すでに研究分野に加え、産業分野への利用に向けた動きが始まっている。

 文部科学省は14年に、富岳が取り組むべき健康長寿や防災、産業競争力強化といった9つの重点課題を設定。指定された大学などにによる研究が進行中で、創薬分野では、京よりも長時間で大規模なシミュレーションが可能になることで新薬を発見しやすくするほか、気象分野でも、京では難しかったビッグデータの迅速な分析により集中豪雨などの自然災害の早期予測を目指す。京で1週間程度かかっていた自動車車体の精密な空力シミュレーションは、一晩で実行できるようにするという。

 初出荷セレモニーで富士通の時田隆仁社長は「富岳は今までの防災や医療、創薬といった多くの社会課題に加え、幅広く産業利用にも貢献し得る可能性を秘めたスパコンだ」と語った。

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