高論卓説

シニアに期待、飲食店ビジネス 敷居低いからこそ綿密な計画を

 老後資金2000万円といわれて、定年退職後はのんびり年金暮らしというわけにはいかなくなった。食に関心があり、自分でも何か作ることができる人の中には、飲食店の経営を企画している人もいると思う。(古田利雄)

 確かに飲食店の経営は他のビジネスに比べて敷居が低いように感じるかもしれない。しかし、安易に始めると1年も続けられないこともある。

 私は飲食店の経営に関与したことがあるので、飲食店を開業する場合に注意した方がよいポイントを反省も込めて紹介する。

 まず、しっかりとした事業計画を作ることである。中小企業庁のWEBサイトには事業計画書のひな型があるので利用すると良い。日本の外食はデフレ傾向が強いため、料理の価格を決める際に安さを売り物にしたいという心理が働く。しかし、事業計画書において、客単価、来客数、粗利、販管費などを精査すれば、そのような価格設定では事業を継続していくのは難しいことが分かる。薄利多売は資本のある事業者ができる戦略である。

 出店予定の場所に既存の事業者がいる場合、その店の価格に合わせると採算が合わないこともある。長年営業してきた店舗は設備投資の減価償却が終わっていたり、自社物件で賃借料負担がなかったりする場合もあり、新規開店する店とはそもそもコスト構造が違うからである。一度設定した価格は値上げしづらいから、キャッシュフローに配慮した価格設定をするべきなのだ。

 次に、飲食店はEC(電子商取引)と違って、特定の地域で行われる事業である。駅ごとの乗降客数や、昼間人口などのデータを調べ、その地域の昼間人口の属性や嗜好(しこう)をリサーチする必要がある。創業者が味もコストパフォーマンスもリーズナブルだと思っていても、店舗所在地で飲食する顧客がそのように思わないことも多い。

 飲食店経営では、価格、料理以外にも、店の内装やサービスも重要な要素である。飲食店は清潔であるべきはもちろんだが、その内装は提供する料理、サービスのグレードと合わせる必要がある。顧客は、店舗に入ったときに、店舗の内装のグレードによって料理やサービスのレベルを予測する。

 例えば、高級感のある店舗を居抜きで引き継いで営業した場合、コストを引き下げるために、顧客にセルフサービスを求めたりすれば顧客は粗末に扱われたように感じてしまう。

 店舗を選んだり設計したりするときは、提供する料理、サービスよりも少し控えめに店舗の雰囲気を設定する。そうすると、顧客が店舗に入って予想したものよりも良い料理とサービスを受けたと感じることになる。飲食店のビジネスではこのような顧客の期待値のコントロールが重要なのだ。満足なサービスを提供するには人も確保する必要がある。しかし、現在、飲食店の求人は容易ではなく、パートタイマーの勤務シフトを過不足なく組むのも難しい。ゆえに席数の多い店を出すのはより慎重であるべきだと思う。

 とはいえ、飲食ビジネスは、顧客の喜びを直接感じることのできるやりがいのある仕事だし、消費者としてはフランチャイズ店ばかりでは面白くないのでシニアのチャレンジに期待したい。

【プロフィル】古田利雄

 ふるた・としお 弁護士法人クレア法律事務所代表弁護士。1991年弁護士登録。ベンチャー起業支援をテーマに活動を続けている。東証1部のトランザクションなど上場企業の社外役員も兼務。東京都出身。

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