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アサヒビール、月次販売数量を非公表へ シェア争いから脱却、販売不振も背景か

 アサヒビールは11日、ビール類(ビール、発泡酒、第3のビール)の月次の販売実績について、令和2年1月分から数量ベースでの公表をやめ、金額ベースに切り替えると発表した。数量実績を公表しないことで、国内のシェア争いから事実上離脱する狙いがある。ビール類市場の縮小が続く中、アサヒは今年の販売実績次第で首位陥落の可能性があることも判断を後押ししたとみられている。

 アサヒを含む大手4社は毎月上旬、前月の販売実績速報を公表。ビール類全体の実績については、販売数量の対前年同月比増減率を開示している。アサヒとキリンビールが首位争いを続ける中で数量ベースの実績公表が定着。「首位」の肩書きが消費者の関心を呼んできた経緯がある。

 アサヒの開示方針の変更は令和2年分以降、この実績について数量ではなく金額を基にした前年同月比増減率を示すというもの。ビール「スーパードライ」といった主要ブランドは従来通り販売数量を公表する。

 理由についてアサヒは、業績評価の指標を数量から売上高など金額ベースに切り替えるためだと説明。アサヒグループホールディングス(HD)の決算短信などでも、基礎情報を販売数量から金額へと切り替えるという。ただ、「業界疲弊のもととなる過当な国内シェア競争環境を緩和し、新市場創出を重視する経営へシフトする」(広報)ともしており、シェア競争から事実上、距離を置く戦略も公言している。

 アサヒの足元は苦しい。ビール類販売数量はスーパードライ30周年を迎えた平成29年に前年割れが始まり、反転攻勢を誓った今年も前年割れの見通しだ。

 国内市場も人口減などの影響で、昨年まで14年連続で縮小中。さらに令和8年のビール類酒税一本化に向け、来年10月にはビールの減税と第3のビールの増税が実施されるなど、市場環境も変わり始める。

 今回のアサヒの“慣例離脱”は、今年の販売実績で「アサヒとキリンの首位逆転もありえる」(業界関係者)と見込まれていた中での判断だ。キリンなど3社は「現時点で公表方法を変更する予定はない」としており、アサヒの首位の苦しみが垣間見える。(日野稚子)

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