金融

かんぽ調査報告 増田元総務相「組織全体に目詰まり」

 社会や環境の変化に対応するために郵政民営化をしたが、内実は変化に対応しきれていないことが、日本郵政グループでかんぽ生命保険の不適切販売問題が起こった本質とみている。政治も今は民営化への熱気が冷め、距離を置いているようにみえる。今回の問題でそのあたりがどう変わるかに注目している。

 かんぽ生命には民業を圧迫しないよう新商品の発売に政府の認可が必要な「上乗せ規制」が課される。低金利で主力の貯蓄性商品の魅力がなくなり、時代に合った保障性商品を開発しようにも思ったようにできない。旧態依然とした商品でノルマをこなすのに、現場が追い詰められていった。

 不正を抑止するためのガバナンス(企業統治)が機能しておらず、さらに傷口を広げてしまった。問題の端緒があっても経営陣まで情報が届いておらず、グループ間の連携も悪い。縦にも横にも組織全体に目詰まりが広がっている。これらを相当意識して検証して見直さなければ、また同じことを繰り返す。

 持ち株会社の日本郵政はこういう問題が起こらないために存在意義があった。トップは民間企業経験が豊富で立派な方ばかりだが、それだけではダメなのかもしれない。さまざまな出身母体から集まる巨大組織のガバナンスは難しい課題だ。

 経営の自由度を増すためにも民営化は進めていかなければならない。移行期間にあたる中途半端な状況はどうしてもある。そこで早く自立し、社会から評価されようと努力しなければならないが、郵政グループは自分たちでそのチャンスを逃してしまった。

 金融2社依存する体制からの脱却や日本郵便の将来の経営の柱づくりなど成長戦略も大事だが、今はそれ以前にまずガバナンスを立て直しが先決だ。時間をかけて失墜した信頼を取り戻せなければ、次の段階には進めない。(談)

     

 ますだ・ひろや 東大卒。昭和52年建設省。平成7年から岩手県知事を3期務めた。第1次安倍晋三改造内閣、福田康夫内閣(改造含む)で総務相。郵政民営化委員会委員長も歴任し、現在は野村総合研究所顧問。67歳。東京都出身。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus