金融

「不信 かんぽ調査報告」(下) 引責先送りで大炎上、解明は道半ば

 日本郵政グループが18日に公表したかんぽ生命保険の不適切販売問題をめぐる調査報告は実態解明にはほど遠い内容となった。調査自体が終わっていない上、焦点だった経営トップの進退など経営責任についても、弁護士らで構成する特別調査委員会と会社側がともに明言しなかった。問題は収束に向かうどころか、さらに炎上した。

■幕引き腐心

 「事の重大性が分かっているのか」。18日の日本郵政の長門正貢社長らの記者会見の内容を報道で目にした元郵便局長の男性はあきれたように漏らした。「なぜ、あんな逃げ腰なんだ」。

 「調査件数は積み上がってきた。顧客対応もそれなりに示せる」。1週間ほど前、かんぽ生命の幹部は調査の進捗(しんちょく)に手応えを語った。年末の調査報告と金融庁の処分を踏まえ、「あとはメディアをどう納得させるか」と幕引きの仕方に腐心する関係者の姿が散見された。

 ところが蓋を開けてみれば、大炎上-。「とても納得できない」と東京都内在住の60代男性の契約者は憤慨する。50代の愛媛県の郵便局員は「会社がこの先、どうなるのかが見えない」と漏らした。

■判定済み2割

 顧客や社員の不安を払拭できないのは調査が“道半ば”だからだ。調査では顧客に不利益を被らせた疑いのある約18万3000件のうち顧客の意向を確認し法令や社内規定に違反したと疑われる契約は1万2836件と9月末時点から倍増。だが、販売員の聞き取りなどを経て違反かを判定できたのは2487件と疑いがある件数の2割にとどまる。

 違反と判定した社員は社内で処分するが、確認作業に時間がかかり「不正を働いた社員がまだ処分されないのはおかしい」と郵便局員の不信感もくすぶる。並行して進める全件調査の結果、不適切販売の件数がさらに増える可能性もある。

 最大の問題点は、郵政グループ3社のトップは引責辞任が不可避のはずが、長門氏は経営責任について「しかるべきタイミングで改めて発表する」と明言を避けたことだ。「経営責任にはいろいろある。辞任だけではない」とも述べた。

■決断できず

 特別調査委の報告では、高齢者狙いの不正の手口やそれを抑止できない統治不全などグループの惨状が明らかにされた。トップが辞めても問題が解決するわけではないが、再生に向かうには早期に責任の所在をはっきりさせることが不可欠だ。外部の目で不正の実態が明るみに出るタイミングがその区切りと思われた。

 もっとも、郵政グループのトップ人事の決定者は官邸であり、長門氏らが自らの意思だけで決断できないという事情もある。「金融庁の行政処分が出る27日に合わせるのではないか」と金融関係者はみている。別の関係者は「官邸、金融庁、総務省が誰が辞めるか、時期、後任人事などで一致できていないようだ」と内実を打ち明ける。

 いずれにせよ、郵政グループは再生に向けた課題の一つを先送りしたことで、信頼回復の道はさらに遠ざかり、問題は長期化の様相を呈している。(この連載は蕎麦谷里志、高木克聡、西村利也、万福博之が担当しました)

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