日本の議論

AIの軍事利用の是非は?日本はどうすべきか 有識者に聞いた (1/2ページ)

 高度な人工知能(AI)を搭載し、人間が関与せず相手を殺傷できる自律型致死兵器システム(LAWS=ローズ)を国際的に規制する初の指針が昨年11月に決まった。AIの軍事利用と日本の対応について、元陸上自衛隊東部方面総監の渡部悦和氏と東京工業大名誉教授の広瀬茂男氏に聞いた。(小野晋史)

 渡部悦和氏「規制しても実効性は全くない」

 --日本政府は、人間が関与しない完全自律型のLAWSを開発しないとの立場だ

 「政府の立場を支持する。最終的な攻撃の判断などに人間の関与を残しておくのはベターだと思う。ただ、AIの開発をこれ以上制限するのはやめるべきだ。完全な自律ではない、自律的な兵器そのものを禁止するような立場は取るべきではない」

 --LAWSの開発を規制しようとする国際社会の動きをどう思うか

 「規制しても実効性は全くない。民主国家の人権派はLAWSを完全に禁止させようとしているが、中国は開発を目指す。彼らには制限がないからだ。かつて対人地雷やクラスター爆弾の禁止条約を日本は批准したが、中国だけでなく米国やロシアも批准していない。それと同じで、LAWSを禁止する条約ができても彼らは批准しない。自らの手を縛るようなまねはしないだろう」

 --日本は将来、LAWSで武装した中国やロシアと向き合わねばならないのか

 「そう考えるべきだ。中国は米国との間で世界一争いをやっており、完全な自律型のAIを搭載したシステムが戦い合う世界を最終的なターゲットとしてにらんでいる。もっとも、完全な自律のシステムを達成するのは現代の技術でもなかなか難しい。大切なのは、完全でなくても、AIを用いた自律的なシステムがある点だ」

 --中国では無人航空機をはじめ、AIの軍事利用が急速に進んでいる

 「中国政府は2030年にAIで世界一になると言っている。人民解放軍も(民間技術の軍事転用などを行う)軍民融合の戦略の下、民間のAI技術を軍事の全ての分野に適用しようとしている。キーワードは『AIによる軍事革命』だ。例えば14億人のビッグデータは彼らのものすごい財産で、民主国家のような情報収集の制限がないため、無制限に集めてAIの開発に活用できる。彼らは真剣にやっており、いずれ人民解放軍は最先端の軍隊になってしまうだろう」

 --日本はどうすべきか

 「このままでは日本が守れなくなるという危機感を持つべきだ。新たな防衛大綱では陸海空に加えて宇宙やサイバー、電磁波といった領域も重視しているが、この全てで積極的にAIを適用する必要がある。これから必ず、尖閣諸島近くの空や海で中国の無人機に遭遇する。東シナ海や南シナ海で、無人の潜水艇による潜水艦の探知システムを構築されたら非常に大きな脅威だ。防衛に携わる者は、最悪に備えないといけない」

 わたなべ・よしかず 昭和30年、愛媛県生まれ。東京大工学部卒。陸上自衛隊に入隊し第2師団長などを経て平成23年に東部方面総監。25年に退官後、富士通システム統合研究所安全保障研究所長。

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