プロジェクト最前線

職人技とデジタル技術融合 オンワード「カシヤマ ザ・スマートテーラー」 (1/2ページ)

 オーダースーツ、職人技とデジタル技術融合

 スーツなどのオーダーメードサービスが相次ぎ登場し、販売を伸ばしている。その代表的存在が、オンワードホールディングス(HD)傘下のオンワードパーソナルスタイル(OPS、東京都港区)が手掛ける「カシヤマ ザ・スマートテーラー」だ。オーダーメードならではのフィット感や高級感を、既製服に劣らぬ低価格で実現。「クールビズ」に象徴されるカジュアル化の進展で、スーツ市場が冷え込んでいるにもかかわらず、急成長を遂げている。

 短納期・低価格を実現

 カシヤマ ザ・スマートテーラーは、2017年10月に提供が始まった。3万円からの低価格に加えて、注文から最短1週間で自宅に届く短納期を実現。2年目の19年2月期には早くも37億円の売り上げを達成し、今期は60億円、22年2月期には150億円とさらなる拡大を狙っている。

 ブランド立ち上げを主導したOPSの関口猛社長は「自分を含め3、4人でチームを組み、準備に約10カ月をかけた。最初から納期は1週間以内と決めていた」と振り返る。

 オーダーメードではボディーサイズの把握が不可欠だが、正確に採寸するのはそう簡単ではない。ZOZOがセンサーの付いた「ZOZOSUIT(ゾゾスーツ)」の配布による自動採寸を普及させようと試みたものの、結局不発に終わったのは記憶に新しい。

 これに対し、オンワードは無理にデジタル技術を使おうとはせず、長年の事業で培った職人技や店舗運営ノウハウを生かす道を選んだ。具体的には各地に採寸用の店舗を開設。経験豊富なスタッフが採寸を行うほか、顧客が仕上がりをイメージしやすいよう生地と完成品のサンプルを置いた。スタッフが顧客の希望する場所に足を運ぶこともあり、会社やファミレスで採寸したこともあるという。

 もっとも、それだけで「低価格・短納期」は実現できない。そこで、採寸以外ではデジタル技術を徹底活用した。

 例えば、採寸データは中国・大連の自社工場に送られ、それを基に専用の機械が直ちに自動で生地を裁断。完成すると顧客の元に直送し、在庫や中間マージンを省いている。「F2C(ファクトリー・トゥー・カスタマー)」と呼ぶ手法だ。

 ビジネスチャンスを逃すまいと、19年4月には大連工場内にオーダーメード専用の第2工場棟を新設し、年10万着の生産体制を確立。9月に稼働した佐賀県武雄市の工場でも20年から女性向けスーツを生産する計画だ。

 勢いに乗った同社は、昨年から中国と米国でもサービスを開始。ニューヨークでは、シェアオフィス内に店舗を開設し、コストを切り詰めた。もちろん品質面で妥協する気は一切なく、オンワードHDの保元道宣社長は「海外にメード・イン・ジャパンという付加価値を伝えていく」と強調する。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus