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企業競争力を強化するためには イノベーションよりリノベーション

 ビジネスリノベーション社長・西村佳隆

 企業競争力を強化するためにはデザイン経営、イノベーション(革新)が必要で、本質的な価値を創造しなければならない。その突破口は「イノベーションよりリノベーション(価値の再定義)」という考え方だ。

 「イノベーションを起こそう」と掛け声をかけても、何をしていいのか分からないという会社や部門が少なくない。本来のイノベーションは、「自分たちの強みを生かして、顧客に価値を感じてもらう」取り組みであるはずだが、イノベーションが技術革新と訳されていることもあり、誤解が生じているようだ。

 サービス業の生産性向上が課題だと言われて久しい。しかし、「当社は技術とは無関係だ」と、イノベーションに取り組まないケースがある。一方、製造業では研究開発部門にイノベーションの責任を押し付けているケースが見受けられる。興味のある研究を進めたいという技術者の習性と相まって、「顧客にとっての価値」が遠のいてしまう。

 顧客にとっての価値は、基本的には「誰に何を」だ。つまり、受け取る側がどんな人(会社)かによって価値を感じるポイントが違う。「誰に」から見てみよう。顧客を想定する際には性別、年齢別の区分であったり、「ペルソナ」と言われる特定の顧客像をつくり上げたりする。このほか、「困りごと」もしくは「要望」によって顧客をグループ化することも有用だ。

 「何を」については、機能・性能と価格の話ばかりになりがちだが、その顧客がどうしてほしいのか、広い視点、多面的な視点でつくり出す必要がある。例えば、機械の防振用ラバーを造っている会社で考えてみよう。競争優位性を向上させようと、納期の早さや価格低減に取り組む事業者が多い。また、防振特性に優れたラバー材の研究開発に力を注ぐ。

 そこで、誰が何に困っているのか考えてみる。企業の購買担当者を顧客だとすると、確かに納期と価格が重要だ。しかし、企業の設計者が顧客なら、その設計者は要求品質を達成するために頭を悩ませており、振動対策まで考える余裕がない。そんな時に「振動対策はお任せを」と提案できるラバー会社は、開発投資リスクを負うことなく、ラバー製造業から振動対策サービス業へ生まれ変われる。これがリノベーションだ。

 実は、筆者が主張する「リノベーション」こそが本来のイノベーションなのだが、「イノベーションよりリノベーション」と言った方が日本の企業には伝わりやすい。

【プロフィル】西村佳隆

 にしむら・よしたか 横浜国大工卒。ヤマハ発動機、ワタミ、サミーネットワークスなどを経て、2015年ビジネスリノベーションを設立。事業活性化支援を行う。日本医療デザインセンター理事、経済産業省認定経営革新等支援機関、立命館大デザイン科学研究センター客員研究員。著書『ビジネスリノベーションの教科書』で価値の再定義を主張。51歳。京都府出身。

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