2020 成長への展望

東京海上ホールディングス社長・小宮暁さん(59)

 医療・介護や中小向けに開拓の余地

 --国内は台風など自然災害の多発により、損害保険会社にとっては影響が大きかった

 「想定外のような災害が2年連続で起きたことを考えると、これまでとは違った対応が必要になる。テクノロジーを使った迅速な保険金支払い体制の強化、保険金支払いの一部を肩代わりする再保険や異常危険準備金を経済合理性のもとで判断して考えていく」

 --火災保険料の値上げも考える必要がある

 「自然災害を避けられない日本では、火災保険はなくてはならない保険だ。持続的にするためコスト削減や経営努力をしっかり進めていく。だが、火災保険は収益を取りにくい。保険料率水準(の引き上げ)や、全国一律の水災補償の保険料についても地域ごとのリスク実態に見合った料率を検討する必要がある」

 --海外事業については

 「昨年10月発表した米富裕層向け保険大手のピュアグループの買収で、保険事業に占める海外比率は47%から49%になった。海外事業の拡大で国内の災害リスクを分散させられたが、それでも昨年の自然災害では収益に2割程度の下押し影響を与えた。こうした影響をさらに抑えるべく、海外展開はさらに加速していく考えだ」

 --人口減少などで国内市場は縮小が懸念される

 「サイバーリスクや医療、介護向けなど保険分野はまだ広げられる。国内企業の99%を占める中小企業では賠償責任や労働災害保険の加入率が低い。ここも伸ばせる余地は大きい」

 --今年はいよいよ東京五輪・パラリンピックが開催される。開催後の景気をどう見るか

 「昨年10月の消費税増税に伴う駆け込み需要の反動減を防ぐための政府の経済対策もあった。五輪景気の若干の反動減はあるかもしれないが、堅実に推移するのではないかと思う。五輪景気で建設業界が多忙なため、建設予定だったものが五輪後に時期もずれ込んでいるものがある。また、五輪を目当てに訪日した外国人旅行者が再度、日本に来る期待もあり、インバウンド需要の拡大にもつながるだろう」

 --東京海上日動火災保険は東京五輪・パラリンピックのゴールドパートナー企業を務める

 「大会とアスリートの挑戦を全力でサポートしていくつもりだ。損保会社としては、大会観戦に来る訪日客向けに災害時の被害やものを紛失した際などの補償を受けやすいよう、通訳とセットにしたサービスの提供なども始める。一連の支援で、東京海上HDのブランドやイメージ向上にもつなげたい」

                   ◇

【プロフィル】小宮暁

 こみや・さとる 東大卒。1983年東京海上火災保険(現東京海上日動火災保険)入社。東京海上ホールディングス経営企画部長、専務などを経て、2019年6月から現職。神奈川県出身。

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