2020 成長への展望

MS&ADHD社長・柄沢康喜さん(69)

 火災保険 リスクに応じ細分化図る

 --今年の景気の見通しは

 「東京五輪・パラリンピック後も、超スマート社会への設備投資は官庁で続くだろう。また、自然災害の復興や防災、インフラの更新などに向けた建設需要も伸びる。政府の経済対策や教育無償化などの効果で、消費税増税による需要の大幅な反動減は乗り切った。ラグビーワールドカップや東京五輪を機に訪日客のリピートが増え、消費も好調となるとみている」

 --近年の相次ぐ自然災害で損害保険会社に大きな影響が出ている

 「保険を長期安定的に供給するためにも、企業の収益性を高め、経営体力をつける必要がある。ただ、今年も昨年、一昨年のような自然災害が続けば、株式配当をせずに(災害などによる大規模な保険金の支払いに備える)異常危険準備金の積み立てに回すことも考えなければならないだろう」

 --災害による保険金支払いが増え、火災保険は赤字が続いている

 「10年続く赤字は、少なくとも解消しなければならない。企業努力を進めてはいるが、お客さまにもリスクに見合った保険料の支払いをお願いしたい。建造物の築年数や地域別のリスクを踏まえた保険料率の細分化のほか、防災・減災に取り組めばインセンティブが働くような保険商品の提供なども考えられる。水災被害を補償する(火災保険の)水災補償の全国普及率は約7割にとどまっており、さらに普及を広げていくことも進めていきたい」

 --海外事業の展開は

 「海外展開の基本的な方針はアジアを重点としており、東南アジア諸国連合(ASEAN)を中心に保険事業が経済成長に役立つようサポートしていく。一方で先進国は米国が次のターゲットだが、保険金の支払額が高額化し、買収案件もコストに見合ったものがなく難しい」

 --傘下に特徴の異なる会社を置いて効率化と成長を目指す「機能別再編」を進めているが課題は

 「三井住友海上火災保険とあいおいニッセイ同和損害保険の成長率は高く、機能別再編は成功したといえる。ただ、両社の独立性を保ちつつも、保険金支払いの共同化など業務効率を最大化する余地はまだある。今後、自然災害多発で収益性が上げられない状況が続けば、事業効率の最大化のため両社の合併は選択肢にある。一方でデジタライゼーションが進み、代理店を介在しなくても保険を販売できるモデルが構築されれば、分野ごとに事業を細分化することもあり得る」

【プロフィル】柄沢康喜

 からさわ・やすよし 京大卒。1975年住友海上火災保険(現三井住友海上火災保険)入社。同社経営企画部長、社長などを経て、2014年6月から現職。長野県出身。

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