大和証券グループ本社SDGs推進室長・川那部留理子さんに聞く
--国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」の推進に力を入れる経営戦略上の狙いとは
「当社としての持続可能性を追求するため、SDGsに真正面から向き合ってビジネスにすることが非常に重要だ。新しい中期経営計画が始まった昨年度以降、伝統的な金融ビジネスと相関関係の低い分野で、SDGsのレンズを通した新ビジネスを複数立ち上げている」
--貧困や環境問題の解決を図る用途に資金使途を限定するインパクト投資の取り組み状況は
「2008年に日本で初めて、国内個人向けに途上国のワクチン接種に資金使途を限る債券を発売した。個人向けSDGs債の累積販売実績のマーケットシェアは半分を占める。また、市場活性化に貢献するため、当社もグリーンボンドを発行した。再生可能エネルギー発電プロジェクトへの投融資に活用する」
--インパクト投資の今後の目標や課題は
「特に個人投資家のニーズに対応した債券を増やしていきたい。市場で評価を受ければ配当が上がる株式投資と違って、債券投資は発行体のSDGs施策が評価されても投資家が受け取る利子が上がることはない。SDGs債投資に対する減税制度の導入など、国の政策展開も進めば、市場のさらなる活性化が期待できるのではないだろうか」
--SDGsと金融を掛け合わせたビジネスの次の展開は
「教育分野のデジタル変革に着眼した銘柄を組み入れた投資信託を設定した。運用実績が出たところで発売する計画だ。このほか、商船三井が事業会社として初めて個人投資家向けに発行した環境と社会の課題解決に資金使途を限定するサステナビリティーボンドなど、ランドマークとなる債券の引き受けに注力している」
【プロフィル】川那部留理子
かわなべ・るりこ 英サセックス大大学院修了。2005年大和証券グループ本社入社。エクイティ・キャピタルマーケット部などを経て、18年10月から現職。滋賀県出身。