論風

誤解多い石炭悪玉論 高効率技術で国際貢献を

 □社会保障経済研究所代表・石川和男

 2019年12月にスペイン・マドリードで開かれた国連気候変動枠組み条約第25回締約国会議(COP25)。そこでは“国際的な環境NGO”と自称する団体が地球温暖化対策に消極的な国に贈る「化石賞」に日本を選んだ。梶山経済産業相は記者会見で温暖化ガス排出源の一つとなっている石炭火力発電について「化石燃料の発電所は選択肢として残しておきたい」と表明した。

 石炭の利用に対しては、地球温暖化防止の観点という名目で、近年急速に否定的な報道や動きが相次いでいる。COP25開幕の際、国連のグテレス事務総長は、石炭火力発電への依存をやめるよう訴えた。こういう報道を見聞きし、日本は地球温暖化・気候変動の防止に消極的だと思ってしまう人は、少なくないのではないだろうか。

 ◆上位6カ国で75%

 実は17年の実績ベースで見ると、最大消費国は中国で、世界の石炭消費量の48%を占める。インドを加えた上位2カ国で61%、米国、ロシア、ドイツを加えた上位5カ国で75%となる。日本は第6位で、世界の石炭消費量の2.5%程度。石炭消費上位5カ国に化石賞、特に最大消費国、中国に贈られないのは甚だ疑問ではないか。

 実はこの化石賞、COPの場では00年のハーグ会議以来少なくとも7回は日本に贈られている。そのせいか、同賞はどの国からも評価を得ていない。石炭消費量上位5カ国はあげつらわず世界の数%でしかない日本たたきに悪用するとは、どこかの国による非常に政治的なものを感じる。

 インドにも固有の事情がある。COP25でインド産業連盟と意見交換を行った東京大学公共政策大学院の有馬純教授によると、次の通りだ。

 (1)インドには「絶対貧困線」以下で暮らしている人が数億人おり、生活レベルが上がれば石炭、石油、ガスの消費は増大する(2)再生可能エネルギーを大量に導入しているが、エネルギー需要全体が急増しているため、石炭消費の絶対量は減少しない(3)インドでは「石炭悪玉視」はワークしない。石油、ガスの輸入増大はセキュリティー上の懸念があり、再エネ100%はあり得ない(4)発電部門の少なくとも30~40%は石炭であり続ける。石炭火力の多くは老朽化しており、これを高効率のものにリプレースしなければ古い石炭火力が使われ続けるだけだ。

 ◆投資家も圧力

 とはいえ、石炭に関連する事業・事業者を投資対象から外す投資家も出現し始めている。世界銀行や欧州投資銀行(EIB)は13年に石炭関連事業・事業者への融資を行わないことを決めた。19年には欧州復興開発銀行(EBRD)が同様の方針を打ち出した。さらにEIBは19年に、天然ガスに関連する事業・事業者にも融資を行うべきではないとの方針を公表したが、ここまでくると“病的”ですらある。

 翻って日本の担うべき役割は、やはり今後も需要増が見込まれるアジア諸国に対して、石炭の高効率利用技術を積極的に供与していくことだろう。日本はこれまで諸外国に対して、再生可能エネルギーや水素、排出した二酸化炭素(CO2)をためる「CCS」やためて使う「CCUS」をなどさまざまなエネルギーの選択肢を提案・支援してきた。同時に、石炭火力発電の利用国には高効率発電技術を輸出してきた。これはアジア諸国の経済発展への寄与のみならずアジア全域の温暖化対策や大気汚染防止にも役立っている。

 経済産業省の試算によると、日本で商用化されている最高効率の技術(USC=超々臨界圧)を中国やインドなどのアジア諸国と米国の石炭火力発電所に適用すると、CO2削減効果は年間約12億トンに上る。これは日本全体のCO2排出量(年間約13億トン)に匹敵する。日本が採るべき国際貢献策は一部先進国などと一緒に「脱石炭」を叫ぶことなどではない。今後も需要増が見込まれるアジア諸国への高効率技術の積極的供与であるに決まっている。

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【プロフィル】石川和男

 いしかわ・かずお 東大工卒、1989年通商産業省(現経済産業省)入省。各般の経済政策、エネルギー政策、産業政策、消費者政策に携わり、2007年退官。11年9月から現職。他に日本介護ベンチャー協会顧問など。50歳。福岡県出身。

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