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日本技術貿易、中国の「タイムスタンプ」提供開始へ

 知財支援サービス国内最大手の日本技術貿易(NGB)は近く、中国での訴訟対策や営業秘密管理対策などを進める日本企業向けに、聯合信任タイムスタンプ・サービスセンター(TSA)の「トラステッド・タイムスタンプ」を提供するサービスを開始する。

 TSAは、国務院直属で中国の法定時刻を定める中国科学院国家授時センター(NTSC)と民間の北京聯合信任技術サービスが設立した権威あるタイムスタンプ発行機関だ。処理件数は年間200億件を超える。

 NGBは、中国版にはない日本語の利用画面とタイムスタンプの発行時期や件数、内容を管理できる機能などを加えて提供する。インターネットを介し世界中の拠点から中国のタイムスタンプを取得でき、PDF形式の証明書も発行する。タイムスタンプ利用1件当たり500円とアカウント費月額5000円が必要(税別)。

 タイムスタンプは電子データが当該時刻前に存在し、当該時刻以降に改竄(かいざん)のないことを第三者が証明するデジタル技術を使った仕組み。知財関連では著作権、特許、商標、営業秘密などの管理、保護に使われる。中国の裁判で証拠や証拠能力を高める手段としての利用が始まっており、知財関連での活用も急増している。

 一方、海外機関のタイムスタンプを中国の裁判所で使う場合は、当該国の公証機関の証明や中国大使館・領事館の認証を得る必要がある。NGBは中国のタイムスタンプ取得を支援する仕組みが必要と考えた。

 長谷川雅則マネジャーは「日本企業のニーズに沿い本社側でも管理可能な仕組みとした。タイムスタンプの活用には営業秘密や情報の社内管理規定構築も重要。専門的サポートも併せて提供していきたい」と話す。2021年末までに100社獲得が目標だ。

 各国事業者がタイムスタンプに使う時刻の基準は実は違うので、その信用性は重要になる。TSAは国務院直属機関が直接関与し、信用性を保証しているといえる。

 日本では業界で元となる時刻の確保からタイムスタンプの発行まで世界一厳格な技術要件や業務審査基準を設け、国内標準化も終えている。総務省はプラットフォームサービスに関する研究会最終報告書で「国が信頼の置けるサービス・事業者を認定する仕組みを設けることが適当」と検討の方向性を示唆。国のお墨付きが加われば、その信用性はさらに高まる。日本の認定タイムスタンプ発行件数は19年に3億500万件(日本データ通信協会調べ)だが、一気に拡大の可能性も見えてきている。(知財情報&戦略システム 中岡浩)

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