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4年先の価値を生み出すアプローチ

 ビジネスリノベーション社長・西村佳隆

 「一歩先」の製品・サービスを販売するには、4年前から検討を始める必要がある。企画開発に2年かかり、市場投入し「再定義した新価値」が認知されて初期の評判が出てくるのに2年かかる。その時間感覚はサービス業やITではさらに短く、製造業だともっと長いだろう。ちなみに金融機関の事業性判断は、3年で単年度黒字化、5年で累積損失解消が目安といわれる。

 「4年先の価値を生み出す」ためのアプローチには、「顧客のニーズを聞く」派と、「顧客は自らのニーズが分かっていないので聞かなくていい」派がある。あるいは、顧客のニーズをくみ取るマーケットインと、会社の方針を基準とするプロダクトアウトのどちらが良いのかという話もある。

 筆者の主張であるリノベーション(価値の再定義)のアプローチは、(1)ふだんから“世間の風潮”を感じておく(2)(仮想)顧客を観察し対話する(3)困りごとや願望を把握する(4)それを抽象化して自分のものとして取り込む(5)自分のやりたいようにやる(意志を込める)(5)(仮想)顧客に当ててみる-だ。これによりゼロからイチを生み出す。

 具体的にみると、まず(1)の“世間の風潮”を感じておくことは「何にでも興味を持ち、試す」ことで、生み出す製品・サービスの「見せ方」を“世間の風潮”に沿わせるアプローチだ。(2)の(仮想)顧客との対話は、基本的に「最近どうですか」という超オープンクエスチョンから入る。これは話を誘導しないことに主眼がある。「どうですか」と聞かれた相手が“答えを返した領域にその興味が向いている”ということだ。

 (3)と(4)の困りごとや願望の把握と、抽象化の取り込みは、自分のものとするために共感しながら話したり、一緒に体験したりする。(5)の「やりたいようにやる」というのは、客観情報を自分自身やチーム全体に取り込んだ後に主観的に動くことで、自社が蓄積した強みを生かし、他社と違う価値の創出を狙う。(6)の(仮想)顧客に当ててみることは、顧客の価値観とズレがないか、あったとしたらどう修正するかの確認作業だ。

 一連のアプローチの中で、(5)の「やりたいようにやる」については経営層から「客観的なエビデンスを求められる」ハードルがありがちだ。しかし、生み出す前からその裏付けを議論するのではなく、生み出したプロトタイプ(原型)で検証するという考え方の方が「やらないリスク」を回避し、「やるリスク」を小さくできる。

【プロフィル】西村佳隆

 にしむら・よしたか 横浜国大工卒。ヤマハ発動機、ワタミ、サミーネットワークスなどを経て、2015年ビジネスリノベーションを設立。事業活性化支援を行う。日本医療デザインセンター理事、経済産業省認定経営革新等支援機関、立命館大デザイン科学研究センター客員研究員。著書に『ビジネスリノベーションの教科書』がある。51歳。京都府出身。

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