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新型コロナウイルスに負けていられない

  突然の発表だ。サッカーのJリーグは25日、3月15日までの公式戦を延期すると決定。村井満チェアマンが同日夕方、記者会見した。新型コロナウイルス感染拡大を考慮した措置だ。(産経新聞客員論説委員・佐野慎輔)

 Jリーグは2011年東日本大震災などで試合開催を延期したことはあるが、感染症での延期はこれが初めて。厚生労働省は専門家会議を開いて、「ここ1、2週間が感染拡大の瀬戸際」との見解を示したが、スポーツの春にも大きな影を落とすことになった。

 Jリーグ公式戦延期

 Jリーグは先週末に開幕。J1は21~23日の開幕シリーズでは9試合合わせて17万2001人の観衆を集めた。1試合平均1万9111人は、史上最多の観客動員数1141万5463人を記録した昨年の1試合平均2万751人には届かなかったものの、まずは順調なスタートを切ったといえよう。

 開幕前、「開催の延期」や「無観客試合」が取り沙汰された。予定通りの開催はJリーグの強い意志だった。村井チェアマンは「万全の対策、対応で臨む」と決意を語り、従来に増して医療体制を強化した。マスクの着用、消毒液による手洗いを観客に求め応援歌や声援の禁止を徹底した。

 観客もまた指示に従い、各会場では通常とは異なる光景がみられた。サポーターはできる限りの協力をした。縮み志向の日本、日本スポーツ界の中で久しぶりに気の晴れた思いがしていたのだが…。

 Jリーグの決定は今後、ほかのスポーツにも影響してくる。既に生活や経済活動への影響が広がる中、スポーツ界も例外ではないとみられていた。

 多くの観客動員が予想される大会、イベントが中止され、主催者は後始末に追われている。それぞれ開幕まで残り5カ月、6カ月を切った20年東京オリンピック・パラリンピック競技大会への影響も出てきた。選手たちの大会へのロードマップに狂いが生じている。会場などの準備は粛々と進めているが、対策が後手に回ればさらに支障が出て、日本忌避、東京回避につながりかねない。断固とした対応は当然である。

 断固とした対応を

 スポーツによる経済波及効果にも影響することも致し方あるまい。3月1日開催予定の東京マラソンは約3万8000人に上る一般ランナーの参加を取りやめた。東京都に限れば165.9億円、日本全国で284.2億円(17年度)とされる経済波及効果を考えると「ウイルス」を恨みたくもなろう。ましてオリンピック・パラリンピックの経済波及効果は東京都の試算によると、東京で20兆円、日本全体で32兆円である。変事が起きれば日本経済が風邪をひくだけでは収まらない。開催へ気をもむところだ。

 Jリーグにとっては、今年が重要である。昨年7月に公表された18年度事業規模は1257億円に広がり、営業収益は約151億円増と過去最高を記録した。19年度の数値は今年7月の発表を待たなければならないが、史上最高の入場者数を記録しており、前年度を上回る数字が予測される。そして今年度はさらなる押し上げを目指し、組織改編した。複数あった傘下の法人を統合、1月1日付で事業会社として「株式会社Jリーグ」を発足させている。

 22年に創設30周年を迎えるリーグのその後を占う年である。本当なら新型コロナウイルスなどに負けてはいられない。ただ終息への道筋はまだ見えていない。備えを万全に、できる限りの手を打たねばならない。

【プロフィル】佐野慎輔

 さの・しんすけ 1954年生まれ。富山県高岡市出身。早大卒。産経新聞運動部長やシドニー支局長、サンケイスポーツ代表、産経新聞特別記者兼論説委員などを経て2019年4月に退社。笹川スポーツ財団理事・上席特別研究員、日本オリンピックアカデミー理事、早大非常勤講師などを務める。著書に『嘉納治五郎』『金栗四三』『中村裕』『田畑政治』『オリンピック略史』など多数。

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