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新型コロナで社員に「有休」をとらせる日本企業のおかしさ (2/4ページ)

 「わが社に合う」人々を採用し続けた結果

 なぜ具合が悪いのに出社してしまうのか。組織行動学者の視点からみると、「似たもの同士コミュニティ」の行動特性が存分に発揮された結果だと理解できる。同じような教育、同じような考え方、同じような経験を持った人々を日本企業は長い時間をかけて集めて組織化してきた。「わが社に合うかどうか」は長い間、採用の最も大きな基準だった。「わが社に合う」似たような人々を採用し続けた結果、日本企業は同質性の高い「似たもの同士コミュニティ」となった。

 昨今では人口減少の煽(あお)りをうけて、女性も多く採用するようになり徐々に変化はみられるが、このコミュニティのメインプレーヤーは男性で(注1:正社員比率で言うと男女は産業別平均で65:35の割合)意志決定は圧倒的におじさんが中心として担ってきた。

 人は自分と同じ要素のある人間を本能的に好む。ダイバーシティの重要性を声高に企業は叫べども、結果的にはある一定の幅の中での採用である。飛び抜けて異質な人を積極的に採用することは稀(まれ)である。似たような経歴、似たところのある人々が企業に集い、組織が形成されている。この種の似たもの同士コミュニティは一緒に居るとメンバー間の心理的な安心度が高い。似たもの同士はお互いを察しやすいし、そもそも似たようなマインドセットを持つ。

 注1:高田朝子『女性マネージャーの働き方改革2.0』(生産性出版)

 集団の掟を破ることを心配し、思考がフリーズする

 似たもの同士コミュニティが人々にもたらすのは、組織の中で「集団の掟から外れた者認定をされたくない」という渇望である。似たもの同士コミュニティでは他人に迷惑を掛けることを恐れる。互恵が集団の絶対的なルールだからである。

 人手不足の中で休むことは、その分をやる人が必要で他人に負荷がかかる。高熱が出ていて誰が見ても理由がたつような状態ならばともかく、体調不良程度で休むことはずる休みと思われないか。大義名分なく休んだことで誰かに負担がかかると、互恵のルールを壊した、つまり「集団の掟(おきて)から外れた者認定」をされることへの不安感から無理をして出社する。

 一方で、一人で抜け駆けして皆と違う行動をとると組織からの長期的な援助と、仲間からの互恵にあずかることができないという不安も持つ。集団の掟を破ることについての危惧が何重にも積み重なり、自分で判断することができない思考がフリーズした状態になる。外れ者認定されたくないがゆえに、国や企業トップからの強制的な指示をひたすら待つ。

 自分で決めたならば集団の中の異常行動だけれども、上からの指示だったらそれを守るのは正常行動だからである。体調が悪くて欠勤して後で不合理な扱いを受けたくないとの思いが無理にでも出勤する意思決定となる。時間だけが過ぎていき、ウイルスが蔓延(まんえん)していく。

 サラリーマンを襲う「組織分離不安」

 似たもの同士コミュニティは人々に組織分離不安をもたらす。組織に長くいると、組織から物理的に離れることに対して心理的不安を覚えやすい。母子分離不安ならぬ、組織分離不安である。

 ここで言う不安の要因には2つの側面がある。まず、同じ環境から異質な者がたくさんいる環境に出ていく不安である。次に、組織から離れることで目前の仕事が達成できなくなるという不安である。これらの不安は組織に対する好悪の情とは別に発生する。会社が嫌いだと思っていたとしても、仕事に対して忠実でありたいと思えば組織分離不安は発生する。

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