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震災9年 5G時代防災、公から民へ 素早い情報提供、避難効率化

 東日本大震災では、避難を呼び掛ける自治体職員が犠牲になった。今春から商用化が始まる第5世代(5G)移動通信システムでは、防災分野でも高速大容量や同時多接続の特長を生かした新たなサービスの誕生が見込まれる。これまで行政が中心となってきた情報発信が、個人も参加する形となり、避難や救助の効率化につながることが期待されている。

 とあるビルの1室。街の一区画を映し出した大画面映像の端の方から煙が上がっている。人工知能(AI)が映像を分析すると、瞬時に火災と判断、発生場所を特定した。

 これは、NTTドコモが5Gのサービスとして開発した「現代版火の見やぐら」だ。2018年5月に公開され、実用化に向けた研究が続けられている技術だ。解析に必要な高画質の映像データのやり取りが、5Gの高速通信で可能になる。

 5Gでは、通信が集中することで回線が混雑し、通信速度が遅くなるということもなくなる。動画や画像などを投稿しやすくなるため、個人が発信した情報も役立てるサービスが広がりそうだ。

 既存の4Gでもこうしたサービスは出始めている。ヤフーは10日、利用者同士が災害の被害や電気などのライフラインの状況を共有できる「災害マップ」の提供を開始した。災害情報が、投稿された場所とともに地図上に表示され、避難などに役立てられる。

 ITベンチャーのスペクティ(東京都千代田区)は、事故や火災、地震などに関するSNS(会員制交流サイト)の投稿をAIで解析し、発生情報を速報するサービスを提供している。スペクティの村上建治郎代表取締役は「災害時には初動が重要で、いち早い情報収集が鍵を握る。防潮堤などのハードだけではなく、ITなどソフト面の強化により、防災はさらに強化できる」と指摘。5G技術により、さらに精緻(ち)な情報を提供できるようになるという。(高木克聡)

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