ガバナンス経営最前線(4-2)

受賞企業 改革推し進め成長

 5回目となった今回の「コーポレートガバナンス・オブ・ザ・イヤー」。入賞各社はいずれもコーポレートガバナンスを強く意識した経営を行い、自社を改革しながら中長期的な成長を遂げている。2月25日の表彰式では、審査委員がそれぞれに対して講評。各社の取り組みの特徴や効果などについて紹介した。

 ≪経営指標でみた受賞企業≫

 (時価総額(億円) ROE(自己資本利益率)/ROIC(投下資本利益率)/ROA(総資産利益率)/WACC(加重平均資本コスト)

 ◆塩野義製薬

  18215 18.8<26.3≧15.4≧8.4

 ◆日本精工

   4906 11.4≧7.7≧5.3<9.3

 ◆三井化学

   4681 14.9≧7.3≧5.1<5.9

 経営指標間のあるべき関係「みさきの黄金比(ROE≧ROIC≧ROA≧WACC)」を示した。「事業リスクに見合った財務リスクの取り方」「余剰資産を持たない経営」「資金提供者の期待リターンを上回る資本生産性」という観点を満たしているかを評価

 今回の審査は、コーポレートガバナンス・コード全原則が適用される東京証券取引所市場第一部に株式を上場する約2000社(2019年8月1日時点)を対象に行われた。

 このうち、2017~19年を通じて社外取締役を3人以上選任していた企業は、前年同時点比129社増の754社。これだけ見ても、上場企業のコーポレートガバナンスは、形式の面では進展していることがわかる。

 審査委員会はさらに、稼ぐ力の指標として、非金融業の場合は直近3期の平均で自己資本利益率(ROE)10%以上、総資産利益率(ROA)5%以上、金融業の場合は同ROE10%以上、ROA2%以上、社会に対する貢献度の指標として時価総額1000億円以上という条件で絞り込み、109社を選んだ。

 この109社の中から、ガバナンス体制整備の指標として、特定の大株主がいないなど開かれた株主比率(30%以下)、社外取締役比率(3分の1以上)、組織形態(指名委員会等設置会社、指名・報酬委員会(任意も含む)の設置、そして、みさき投資による経営指標分析の枠組み「みさきの黄金比」によるパフォーマンス評価を加点して総合評価し3社を選出した。

 その3社に対しては、審査委員による経営最高責任者(CEO)に対するインタビュー調査を実施し、大賞企業1社を決定した。

 なお、パフォーマンス評価に用いた「みさきの黄金比」は、経営指標間のあるべき関係「ROE≧ROIC(投下資本利益率)≧ROA≧WACC(加重平均資本コスト)」を示したうえで、左から「事業リスクに見合った財務リスクの取り方」「余剰資産を持たない経営」「資金提供者の期待リターンを上回る資本生産性」という観点を満たしているかを評価するものだ。

 ■塩野義製薬 Grand Prize Company

 □自己規律のあるガバナンスの神髄

 塩野義製薬の受賞理由については、伊藤邦雄氏(一橋大学大学院経営管理研究科特任教授)が講評した。

 伊藤氏は同社が自己規律のあるガバナンスの神髄を体現していると評した。改革をリードしたCEOの手代木功氏については、「健全な恐怖心を持っている」「前社長からの距離をおいた上での学びを続けた」「社長という仕事に対する客観的な洞察力を有する」「社員をどう本気にするのかに腐心している」という点で高く評価。社長が本気にならなければ社員は本気にならない、会社をよくするものはどんどん取り入れる、という経営姿勢を実現している点にも言及。日本企業のガバナンス改革は形式から実質へ、という段階を迎えているが、同社の取り組みはこの実質の重要性やそれによる効果を体現している実例、と強調した。

 ■日本精工 Winner Company

 □議論を積み重ね企業価値が向上

 日本精工については、中神康議氏(みさき投資社長)が講評した。

 同社はベアリングメーカーで、仕向け先は自動車産業が7割という状況にある。自動車産業はコーポレートガバナンスについてそれほど熱心ではないイメージがあるが、その中でも日本精工は先進的に取り組んできたパイオニアだ。形式面の整備も早かったが、ガバナンスに向けた精神は特筆に値する。社内の議論では売上高やシェアを重視し、イノベーションに向けた議論も現状の延長線上になりがちだが、社外の目が加わったことで、収益性や本質的なイノベーションに向けた議論がなされるなど風土が変化。こうした取り組みの結果としての企業価値も向上している点は高く評価できる、と説明した。

 ■三井化学 Winner Company

 □伝統企業でも成果出せる手本

 三井化学については審査委員の太田洋氏(西村あさひ法律事務所パートナー弁護士)が講評した。

 同社の受賞は、この賞の5年間の受賞企業の歴史の中で初の財閥系企業であり、かつ、重厚長大企業となった。同社はこの6年間でROEは10%以上するなど業績を高めてきた。これはROICをKPI(重要業績評価指標)採用して事業の選択と集中を進めた結果だという。組織形態は監査役会設置会社だが、ガバナンスの面でも人事諮問委員会主導の解任基準を設けるなど先進的なものになっている。こうした伝統的な企業でも、取り組み次第ではここまでできる、という好例。まさに、すべての日本企業対して、腰を据えて取り組めばこうした成果が得られることを示す“手本”といえそうだ。

 ■コーポレートガバナンス・オブ・ザ・イヤー2019

 主催=一般社団法人 日本取締役協会

 後援=金融庁、経済産業省、法務省、東京都、東京証券取引所/日本取引所グループ

 協力=日本公認会計士協会、一般社団法人 日本IR協議会、アジア・コーポレートガバナンス協会

 データ分析協力=みさき投資株式会社

 ■審査委員の顔ぶれ

 委員長=斉藤惇氏(日本野球機構会長・プロ野球組織コミッショナー)委員=伊藤邦雄氏(一橋大学大学院経営管理研究科特任教授)、太田洋氏(西村あさひ法律事務所パートナー弁護士)、冨山和彦氏(日本取締役協会副会長、経営共創基盤代表取締役CEO)、中神康議氏(みさき投資代表取締役社長)、井伊重之(産経新聞論説委員)

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