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成熟、コト消費、ITは価値の再定義が合う

 リノベーション(価値の再定義)は、顧客の困りごとを広い視野とシンプルな見方で俯瞰(ふかん)するとともに、他業界のリノベーションの動向を自らの業界・自社に応用することで創出できる。「業界通」ではない視点に突破口があることが多い。その真価を発揮できる業界を挙げよう。(ビジネスリノベーション社長・西村佳隆)

 まずは、技術面の進化が「漸進的な改良」から抜け出せなかったり、「将来的な技術進化の方向性」を見つけかねていたりする成熟業界。具体的には、重厚長大ではない製造業がその筆頭になる。この場合は「研究開発をどう進めるか」という初めの問いが違っている。例えば「顧客に価値を感じてもらうには」と、自チームに問うべきだ。そうすると、「どんな顧客に、どんな価値を提供するのか」と話が進む。顧客層ごとの困りごとを列挙すると10や20はすぐに出てくる。そこに提供できる価値を当て込むと、それが正しいかどうかは別として、「どうしたらいいか分からない」という状態から、一気に目の前に数十もの仮説が並ぶことになる。

 次は「モノからコトへ」が合言葉で使われる業界。これはモノづくりの現場だけの話ではなく、販売業界、サービス業界もそのスコープに入る。アプローチは、モノを買ってもらうのではなく、何を「価値だ」と感じてもらって買ってもらうのかだ。例えば、価格競争で困っていて「これからはモノからコトだ」と言っている場合、「顧客の要望をまるごと引き受ける」ことでサービス単価を引き上げるのは有効な手だ。しかし一方で顧客層が大きく変わるため、その過渡期に業績が落ち込むケースがあり、その覚悟が必要だ。

 さらにIT業界。この業界は「どんな困りごとに、どんな便益を提供するのか」に特化して考える。そこを細分化したり、競合とズラしたりする。今後、ITとリアルの相互乗り入れがさらに強化されていくので、この接続部分を中心とした価値の再定義が注目ポイントになるだろう。

 他業界の人がIT業界を見る場合、各サービスが提供している目に見える部分以外に「課金の仕組み」に着目すると面白い。「どうやったら、何に価値を感じてもらって、対価を得るか」というところに工夫が凝らされている。製品やサービスなどの一定期間の利用に対して代金を支払うサブスクリプションの流れはこの業界から始まった。ここで注目すべきは、契約の段階で見せている価値と、継続をやめられなくなる工夫が別であることだ。

【プロフィル】西村佳隆

 にしむら・よしたか 横浜国大工卒。ヤマハ発動機、ワタミ、サミーネットワークスなどを経て、2015年ビジネスリノベーションを設立。事業活性化支援を行う。日本医療デザインセンター理事、経済産業省認定経営革新等支援機関、立命館大デザイン科学研究センター客員研究員。著書『ビジネスリノベーションの教科書』で価値の再定義を主張。51歳。京都府出身。

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