Bizクリニック

革新は「でも」ではなく「それでね」から

 ビジネスリノベーション社長・西村佳隆

 なぜ日本企業はイノベーション(革新)が苦手なのか-。デロイトトーマツコンサルティング(DTC)は2016年2月に発表した「イノベーションマネジメント実態調査2016」で、日本の大手企業を「計画の効率的な実行」ばかり進めていて、「実験と学習の反復」は何もしていないと分析した。「頑張る方向性が偏っている」ということだろう。

 「立てられた計画を早く正確に、効率よくこなす」のは管理者、一方で「独創的なことを好み、ピンチをチャンスに変えることを好む」のはクリエイターだから、DTCの分析はクリエイターが十分に活躍していないことを指していると理解できる。

 そのクリエイターの多くは、管理的な環境のもとで息苦しく仕事をしている。しかし、反発していたら何も生まれない。仲間や上司を否定していては、かえって自分が提案したいことから遠ざかってしまう。自分が「これを実現すべきだ」と信じるならば、どんな手段でも取る覚悟があるはずだ。

 そこで、まず「そうね、そうね。それでね…」と仲間の話をいったん受け止め、自分の主張を投げかけてみるところから出発したい。つまり「でも」ではなく、「でね」からコミュニケーションを始め、仲間を巻き込んでいく。小さな成功を重ねていって、「この人が言うのなら」という信頼を積み上げるのだ。

 クリエイターを自認する人には、自社の製品・サービスについて考えを巡らせても突破口が見いだせない場合、製品・サービスが持つ意味や、その存在意義、価値、満足度に注目してほしい。筆者は、これを世界観と呼ぶ。この世界観に視点を移し、再定義を定めれば、方向性は自ずと決まる。変革は一直線に進むものではない。小さならせんを描きながら少しずつ上昇していくイメージだ。何回も壁に直面しながら、小さな成功を手にし、理解者や協力者が増えていって話題になり始め、次の課題を乗り越え、チャンスを獲得する。どんどんこの渦が大きくなっていくのだ。これがイノベーションにつながる。逆に言うと、最初は小さくて安っぽい存在だが、この芽をつぶしてはならない。従来型の管理の仕組みでは、この小さな芽を育てることが難しいことに気づいてほしい。

 筆者は、変革を生み出す同志を増やすべく、15年にビジネスリノベーションを立ち上げた。ぜひ多くの皆さんとつながり、「業界」ではなく「世界観」というくくりで、ともにイノベーションを生み出していきたい。

【プロフィル】西村佳隆

 にしむら・よしたか 横浜国大工卒。ヤマハ発動機、ワタミ、サミーネットワークスなどを経て、2015年ビジネスリノベーションを設立。事業活性化支援を行う。日本医療デザインセンター理事、経済産業省認定経営革新等支援機関、立命館大デザイン科学研究センター客員研究員。著書に『ビジネスリノベーションの教科書』がある。51歳。京都府出身。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus