金融

日銀、成長率見通し下方修正へ 4月末の政策決定会合で検討

 日本銀行が1日に発表した3月の全国企業短期経済観測調査(短観)は大企業製造業の業況判断指数(DI)が7年ぶりのマイナスとなるなど、新型コロナウイルスの感染拡大で、企業心理が大幅に冷え込んでいる実態が鮮明になった。雇用環境や企業の資金繰り悪化も懸念される中、日銀は4月末に開く金融政策決定会合で、2019年度と20年度について実質国内総生産(GDP)の成長率見通しの下方修正を検討する。

 日銀は27~28日の決定会合で3カ月に一度の「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」をまとめる。前回1月のリポートでは新型コロナについて「今の時点でSARS(重症急性呼吸器症候群)のような影響がある可能性は高いとは見ていない」(黒田東彦(はるひこ)総裁)などと判断し、19年度の成長率見通しを0.8%(政策委員の予測中央値)、20年度を0.9%(同)に上方修正した。

 だが、「2月下旬に局面が変わった」(日銀幹部)。それまで中国の問題とみられていた新型コロナの感染が、欧米など世界に一気に広がったからだ。

 日銀内では「1~3月期に成長率が落ち込んでも、当初はV字回復を想定していたが、4~6月期にも影響が及ぶ」(幹部)などと、景気低迷の長期化を予想する見方が広がる。

 今回の短観で懸念されるのは、7割程度の企業が東京五輪・パラリンピックの延期が決まる前の3月11日までに回答しており、新型コロナの影響が十分に反映されていないとみられる点だ。

 外出自粛や移動制限で飲食や宿泊業などの需要が急減するなか、全規模全産業の雇用人員判断DI(「過剰」-「不足」)はマイナス28と前回12月調査に比べ3ポイント悪化。資金繰り判断DI(「楽である」-「苦しい」)も13と同じく3ポイントの小幅な悪化にとどまった。

 短観の雇用や資金繰り判断について、SMBC日興証券の丸山義正チーフマーケットエコノミストは「新型コロナの影響が十分に織り込まれておらず、さらに悪化するリスクがある」と指摘している。(大柳聡庸)

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