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貴族も食べた「蘇」に脚光 休校で余剰の牛乳活用

 かつて貴族が食したとされるバターやチーズに似た乳製品「蘇」が脚光を浴びている。きっかけは新型コロナウイルス感染拡大を防ぐための一斉休校で、給食用牛乳が行き場を失ったこと。廃棄はもったいないと大量の牛乳を活用する策として蘇に注目が集まったとみられる。酪農家からは「少しでも消費拡大につながれば」と期待の声が上がる。

 「生乳大1斗(7.2リットル)を煮詰めると、大1升(0.72リットル)の蘇が得られる」。平安時代の法令集「延喜式」に、こうした製法の記述がある。世界の牧畜や乳文化を研究する帯広畜産大(北海道帯広市)の平田昌弘教授によると、蘇は地方から貴族へ税の一種として納められ、滋養強壮に効く薬として食されていたという。ほかに詳細な作り方の記述はないものの、平田教授は牛乳を1時間以上弱火でゆっくりかき混ぜ濃縮させれば、当時とほぼ同じものができると推測する。実際に作ったところ「素朴な甘さを感じた」という。

 「クックパッド」(東京)が運営するレシピ検索サイトでは、全国で一斉休校が始まった3月2日から1週間の蘇の検索頻度は前週の約94倍に。同社編集部は「牛乳さえあれば作れる手軽さと物珍しさで注目が集まったのでは」と分析。ツイッターでは「蘇を作ってみた」という投稿が相次いだ。

 北海道別海町で酪農を営む30代男性は「今後も大規模な休校が続けば、経営への影響は避けられない。蘇のブームが少しでも消費拡大につながれば」と期待。宮崎県都城市で20年以上前から蘇を販売している「ミルククラブ中西」の中西朋晃代表(38)は「全国各地から注文が来ている。これまであまり注目されていなかった商品が話題になりうれしい」と語った。

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