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テレワークのサイバー対策急務「今起こっていることは序の口」 (1/2ページ)

 新型コロナウイルスの感染拡大によって、テレワークや遠隔教育の普及が一気に進んできた。ビデオ会議システムの利用者は急増する一方、セキュリティーをめぐる問題が露見し始めている。今や、社会生活を維持するためのライフラインになろうとしているだけに、対策が急務となる。

 「サイバー空間でもウイルスとの戦いだ。リアルな世界で手洗い、うがい、マスクなどをするように、しっかりと対策をしなければならない」

 国際刑事警察機構(ICPO)出身でサイバー犯罪に詳しいヤフーの中谷昇執行役員は、コロナ対策で多くの人がインターネットを長時間利用するようになったことに警鐘を鳴らす。

 実際、これまで目立たなかったサイバー空間での問題が相次いでいる。

 利用者が急伸する米ズーム・ビデオ・コミュニケーションズのビデオ会議サービス「Zoom(ズーム)」。詳しい説明などを読まなくてもスマートフォンやパソコンで手軽に利用できるため、外出規制の世界的な広がりに伴い、1日あたりの利用者が昨年末の1千万人から3月に入り3億人に拡大した。だが、悪意を持つハッカーも引き寄せ、米国では学校の遠隔授業や公開イベントに侵入して差別的な言葉やポルノ映像を流す通称「ズーム爆撃」が問題化した。

 「プライバシー保護やセキュリティーへの期待に応えられなかった」。ズームを運営するエリック・ユアン最高経営責任者(CEO)は4月初めにセキュリティー対策の不備を謝罪し、対応するシステム改修などを急ぐと強調した。

 日本でもソフトバンクなどが出資する「Classi(クラッシー)」の教育支援アプリがサイバー攻撃を受け、4月中旬に利用者約122万人分のIDに流出の可能性が出た。中谷氏は「体制が全然準備されていない日本では、今起こっていることは序の口だ」と被害の拡大に懸念を示す。

 特に新型コロナの流行で、十分な準備がないまま急遽(きゅうきょ)、テレワークを導入した企業は多く、セキュリティー対策は後回しになりがちだ。テレワークに詳しい東京工業大学の比嘉邦彦教授も「ハッカーからすると狙いやすいターゲットが増えた状態だ。今後、いろんな問題が出てくる可能性がある」と指摘する。

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