高論卓説

新型コロナ支援は「陽徳」で 続く者への刺激のための実名公表 (1/2ページ)

 新型コロナウイルスの感染拡大を少しでも防止しようと、持っている技術や設備を活用して、社会貢献する企業が増えてきた。(永井隆)

 サントリーは医療機関向けに、消毒用アルコールの無償提供を4月下旬から開始した。大阪工場で高濃度に蒸留したアルコールの一部を充てている。パナソニックは空間除菌脱臭機「ジアイーノ」の医療機関への無償提供を始めた。トヨタ自動車は感染した軽症患者を移送する特別車両を開発。東京都内の医療機関や千葉県の要請に応え、これまで11台を寄付し、今後も大学病院などに納車していく。

 こうした活動は大企業だけではない。クラフトビール、クラフトウイスキーの木内酒造(茨城県那珂市)は、飲食店を対象に賞味期限が近づいていたビールを無償で蒸留してジンにするサービスに着手した。醸造酒のビールと違い、蒸留酒とすることで長期保存が可能になる。厳しい経営環境にある飲食店に対し、「何かできないかと着想した。当社の蒸留設備を使う」(同社)という。

 婦人下着製造の島崎(埼玉県秩父市)は、小中学生向けに布マスクの無償提供を始めた。工場のある岩手県陸前高田市には4月に3500枚を配布し、秩父市には5月に5000枚を配布していく。陸前高田工場で製造、抗ウイルス機能繊維加工で洗濯の耐久性に優れるのが特徴だ。「東日本大震災で工場が被災したとき、商工会議所をはじめ秩父から支援を受け、恩返しをと考えた。マスク製造は初めてだが、婦人下着製造の縫製技術を生かし子供たちの顔にフィットするようつくり上げた」(嶋崎博之社長)という。

 社会性の高い活動は従来、「陰徳」がわが国では尊ばれてきた。人の見えないところで徳を積む考え方だ。サントリーを創業した鳥井信治郎氏は、陰徳をモットーとした。社会福祉法人をつくり、苦学生には奨学金を内緒で送金し続けた。「雪の結晶」で知られる中谷宇吉郎・元北大教授は、この奨学生の一人だった。昨今では、タイガーマスクの伊達直人氏が頻繁に登場する。

 しかし、ICT(情報通信技術)が発達し世界が戦後最大の危機に直面する今は、「陽徳」も求められる。企業でも人でも、実名をもってやっていることをすぐに、広く公表していくのだ。社会性の高い活動に続こうとする者たちへの刺激にも参考にもなるし、日々刻々と変化する事態への対応にはスピードも必要になる。医療や介護現場の従事者、子供たち、困っている人たちにとって、何が大切かを把握するための情報共有でも、陽徳は有効となるはずだ。

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