宇宙航空研究開発機構(JAXA)の金星探査機「あかつき」の観測で、金星の大気上層部を高速で周回する嵐の詳しい仕組みが明らかになった。昼夜の温度差によって生まれる熱の波が高速化を推進しているという。米科学誌サイエンスに論文が掲載された。
金星の自転周期は地球換算で約243日とゆっくりしているが、高度50~70キロにある雲の層では、その約60倍の速さに当たる約4日で1周する高速の風が西向きに吹いている。この嵐は「スーパーローテーション」(超回転)と呼ばれ、速度が維持される仕組みなどが大きな謎となっていた。
北海道大などのチームは、あかつきに搭載した紫外線カメラで撮影した金星の雲の様子を解析。赤外線カメラによる温度データも合わせてメカニズムを推定した。
その結果、太陽の放射熱による昼夜の温度差で生じる大気運動が勢いを生み、赤道付近で最速となるスーパーローテーションの速度維持に重要な役割を果たしていることが判明した。
あかつきは2010年に打ち上げられたが、軌道投入に失敗。5年後に再挑戦して成功し、観測を続けている。