主張

米の有人宇宙船 「大きな志」を日本も示せ

 「米国の大きな志の新たな時代が始まった」

 米国の宇宙企業スペースXが開発した有人宇宙船「クルードラゴン」の打ち上げを見届けたトランプ大統領は、こう演説し、宇宙開発での米国の「復権」を強調した。

 クルードラゴンは5月31日(日本時間)にケネディ宇宙センター(フロリダ州)から打ち上げられ、国際宇宙ステーション(ISS)とドッキングした。

 米国は2011年にスペースシャトルを引退させ、ISSへの飛行士の輸送はロシアのソユーズ宇宙船に頼ってきた。この間、中国は独自の宇宙ステーション建設を進めるなど、有人宇宙技術でも米露に迫る成果を収めてきた。

 クルードラゴンの打ち上げに成功したことで、米国は9年に及んだ有人宇宙飛行の空白に一応の終止符を打った。宇宙開発の中核を民間企業が担う「新時代」の幕開けにもなった。

 有人宇宙船は無事に帰還し安全性が確認されるまでは「成功」とはいえないが、米国は宇宙開発での威信回復に向けて確かな一歩を踏み出した。日本にとっても、その意義は大きい。

 順調なら、8月末にも予定される次の打ち上げで、野口聡一さんが搭乗する。米国を中心とする国際協力の枠組みのなかで、日本も「新時代」に対応し、存在感を高めなければならない。

 米国は、アポロ計画以来となる宇宙飛行士の月面着陸や有人火星探査という明確な構想を掲げるとともに、米航空宇宙局(NASA)から民間への大胆な技術移転を進めて資金難を乗り越えた。

 宇宙開発予算の規模もベンチャー企業の土壌も、日本と米国は違う。しかし、「大きな志」を掲げて民間の活力を引き出した米国の手法は大いに学ぶべきだ。

 小惑星探査やISSへの物資輸送で、日本の宇宙技術は高く評価されている。しかし、有人宇宙活動に関しては、独自の宇宙船開発の是非を含めて「日本の大きな志」を示す長期構想がない。

 まず、月や火星が舞台となるISS後の有人宇宙開発で日本は何を目指し、どう取り組むのかという「日本の志」を明確にすべきである。その「志」を実現させるためにも、宇宙開発における官民の関係を抜本的に見直し、民間の資金と活力が最大限に活用される仕組みを構築する必要がある。

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