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エアバスが希望退職通じ人員削減 独仏に配慮し強制人員削減は最終手段に

 欧州航空機大手エアバスは強制的な人員削減に動く前に希望退職を通じて人員を減らす計画だ。複数の関係者が明らかにした。経費抑制を図るうえで、最大株主であるフランスとドイツで政治問題が生じないようにする考えだ。

 「元通り」に5年必要

 エアバスは製造部門全体で希望退職や早期退職を募ったうえで、最後の手段として強制的な人員削減を実施する方針という。ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)の航空アナリスト、ジョージ・ファーガソン氏の試算によると、削減される人員は計1万2000~1万6000人に達する公算が大きい。

 エアバスのフォーリ最高経営責任者(CEO)は最近の従業員宛ての書簡で、「数十年に及ぶ成長の後、大きなショックに見舞われている」と述べ、航空輸送が(新型コロナウイルスの影響を受ける前の)2019年の水準に達する時期について、早くても23年までに戻る可能性は低く、25年まで戻らない公算が大きいと警戒感をあらわにした。

 また、5年間続くとも考えられる需要縮小を受け、エアバスは年内に現金流出に歯止めをかけ財務のバランスを取り戻すため、速やかに規模を縮小する必要があると指摘。そのうえで、危機の大きさを踏まえると「胸の痛む決定」を迫られると記した。

 エアバスは恒久的な人員削減計画をまだ示していない。航空宇宙分野やエールフランスKLM、ルフトハンザ航空など大手航空会社に多額の支援を表明しているフランスとドイツにおいては、政治的な観点から人員削減が難しいからだ。それでも「適正なバランスを見いだそうと、経営陣として尽力しているところだ」とフォーリCEOは強調する。

 政治的圧力は不可避

 エアバスは労働争議の可能性とともに独仏両国の政治的圧力を考慮に入れて判断する見通しだ。ルメール仏経済・財務相は、新型コロナの感染拡大の影響から人員を削減する予定のエールフランスに対し、強制人員削減は「超えてはならない一線」だとくぎを刺し、実施すれば同社が経済基盤を取り戻すのが一段と厳しくなると警告した。

 仏政府は150億ユーロ(約1兆8000億円)規模の航空産業の救済策を打ち出しており、エアバスの航空機販売を後押しするための金融支援策もこれに含まれる。独政府による欧州最大の航空会社、ルフトハンザ航空の救済策は90億ユーロを上回る。

 エアバスはまた、欧州全土で政府の雇用支援制度を活用して従業員を一時帰休させており、最近では英国、スペインにも同制度を拡大し、時間稼ぎをしている。

 BIのファーガソン氏はエアバスの人員削減について、「生産率の低下分と同様の削減を予想する。利益率を維持するには3割近い人員削減が必要だと見込む。ただ政治的な支持は得られず、市場の回復に伴いもっと従業員が必要になる点に目を向けそうだ。恐らく(削減率は)15~20%近くに落ち着くだろう」と予想する。

 米航空コンサルティング会社ティール・グループのアナリスト、リチャード・アブラフィア氏は、「生産量に応じて人員削減できる企業はない。エアバスは30年余りにわたり、航空需要の拡大しか経験しておらず、低迷期に直面したことがないという事実が一段と混迷を深めている」と指摘している。(ブルームバーグ Charlotte Ryan、Siddharth Philip)

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