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アフターコロナ 共感生む競争優位性が鍵

 「コンペティター(競争相手)はどこか」と投資家らに質問を受ける機会は多い。差別化戦略を議論するのに有効だ。一方、コロナ後の先行き不透明な情勢では、同業他社との比較を超えて、SDGs(持続可能な開発目標)に代表される国際的な共感を生む目標設定と、それにひもづいた自社の競争優位性を打ち出すことが、経営者により一層求められている。(エヴィクサー社長・瀧川淳)

 「競争」という言葉は、福沢諭吉が翻訳した新語の一つとされる。戦記物が多く争いが絶えなかった近代までの日本史からは意外だが、辞書を引くと「同じ目的に向かって勝ち負けや優劣を競いあうこと」と定義されており合点がいく。この“新語”は「同じ目的に向かって」という前提、すなわち身分制度がなく共通の尺度となる貨幣経済が発達し初めて登場した概念というわけだ。

 同じ時代が舞台の歴史小説『竜馬がゆく』で亀山社中・海援隊が結成される場面は、鎖国と封建制で閉塞(へいそく)感極まりない当時に全く新しい価値観を持ったカンパニーが誕生する躍動感が描かれている。常識と固定化されていたことや無謀と諦めていたことを打破していく坂本龍馬に感動した人も多いだろう。「競争」のルーツは、そうした自由を希求する勇気と視座の高い目標設定がもたらした人類の英知と考える。

 エヴィクサーは「音の信号処理」技術で社会に貢献している。「当たり前と考えている習慣や価値」でも社会課題をはらんでいる事象に向き合い、「シーズ技術からの深い考察と一貫性のある研究開発」とすり合わせる。それによって「人々の行動原理を変える」新たなニーズや価値を見いだし、市場を創生するというのが目標だ。

 改めて競争のルーツに身を寄せ、「何を同じ目的に設定して」シーズ技術の事業化に挑むのかという原点に立ち戻り、共感を生む競争優位性の実現にチャレンジする。このようなチャレンジには、(1)数値目標が定まらない中でリスク許容度から絞り出す意思決定(2)極端なニーズに対応しつつ社会実装の糸口を探るデザイン手法(3)社会問題の根本的な解決を図るために、研究フェーズにある技術の実装や技術の根元から改良することをいとわない開発姿勢-など難題もあるが、情報通信技術(ICT)の発達で企業活動が効率化され、成功事例も出てきている。

 次世代の競争活性化には、龍馬に倣い「世に生を得るは事を成すにあり」という視座の高い信念を持つ経営者が切磋琢磨(せっさたくま)する風土が必要不可欠だ。

【プロフィル】瀧川淳

 たきがわ・あつし 一橋大商卒。2004年にITスタートアップのエヴィクサーを設立し現職。08年以降、デジタルコンテンツ流通の隆盛をにらみ、他社に先駆けて自動コンテンツ認識(ACR)技術、音響通信技術を開発。テレビ、映画、舞台、防災などの分野へ応用し、「スマホアプリを使ったバリアフリー上映」「字幕メガネ」を定着させる。40歳。奈良県出身。

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