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日本企業、米就労ビザ方針に困惑 年内の発給停止に運用の不明確さ懸念

 トランプ米大統領が、米国人の雇用確保を目的に一部の就労ビザ(査証)の発給を年内は停止する方針を打ち出したことに対し、日本企業に困惑が広がっている。新型コロナウイルス感染拡大に伴う入国制限ですでに「米国関連での人事異動で混乱が起きている中、まさに泣きっ面に蜂」(メーカー幹部)など嘆きの声が上がっており、経団連の中西宏明会長も24日の会見で「事務上大変困る」と強い懸念を示した。

 中西氏が会長を務める日立製作所では、米国駐在社員のうち約20人のビザの期限が近く切れるため、帰国を考えなくてはならない状況だ。トランプ政権のビザ発給停止の方針で後任の駐在員を送ることもできず、人事異動に支障を来す可能性がある。

 三菱商事では、コロナの感染拡大に伴う3月からの通常の新規ビザ発給停止で、本来なら既に米国法人に赴任しているはずの社員も派遣できていない。

 一方、日本生命保険は今春赴任予定だった米国駐在員は全員着任済みのため、大きな影響はないという。

 キヤノンもビザ発給停止の可能性があると事前に予想して交代要員の駐在員数人を早めに米国に渡航させたため、「直近の影響は回避できている」(広報部)としている。ただ、ニューヨークの販売会社に100人以上の日本人が在籍する中、ビザの発給停止が長引けば、要員不足の問題が起きかねないと不安は残る。

 ニュージャージー州など複数の米国拠点を持つ日本郵船の広報担当者は「日本人駐在員のビザ延長が認められなければ日本に戻さざるを得ない」と説明。その上で、「管理職の日本人が不在になる場合、現地スタッフだけでカバーしきれない部分もあるのでは」と心配する。

 多くの日本企業が懸念しているのは、トランプ政権のビザ発給停止の方針が実際にどう運用されるのかが明確でない点だ。停止の適用範囲や条件など詳細がはっきりしていない面があり、三井物産では「米国現地法人とともに、情報を注視して対応していく」としている。

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