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高輪新駅 和風屋根でイメージ一新 タブー打ち破る「木材」採用

 JR山手線に3月誕生した新駅「高輪ゲートウェイ」は、鉄道駅舎のイメージを一新した。白い大屋根は折り紙と日本家屋の障子を表現した。屋根を支える「はり」などの骨組みに木材を採用。腐食して落下するなどの危険性があるため、線路上空に木は使わないという“タブー”を打ち破った。デビューは新型コロナウイルス感染拡大の渦中だったが、ようやく活気にあふれそうだ。

 日本らしさこだわり

 JR東日本の武田幸彦さん(45)率いるチームが新駅の設計に着手したのは2014年。最終形にたどり着くまでは試行錯誤の連続だった。フェンスのような編み目、流線形、アーチ状に細い糸を組み合わせるなど多くのデザインが考案され、模型を作っては消えた。「海外からの訪問客を迎える玄関口として、日本らしさにこだわった」と武田さん。JR東は新駅周辺で、高層ビル群による国際的な拠点づくりを構想。監修した建築家隈研吾氏と議論を重ね、吹き抜け構造の駅舎を「折り紙」で覆うアイデアに決まった。短冊を4枚折りで連ねて表現。縦110メートル、横35メートルの大屋根となった。

 コンセプトは決まったが、折り目の部分には水がたまり、雪も積もりやすい。グループ会社が3Dソフトでシミュレーションし、勾配の角度を細かく計算。雨水が必ず外側へ流れる構造を実現した。融雪のため、屋根の10カ所に散水装置を設置し、センサーが雪を感知すると、積もる前に自動で水をまく仕組みだ。

 メンテのしやすさも

 チームは和へのこだわりをさらに追求。屋根の色は白として、骨組みに木材を使い、ホームから見上げると、障子がある日本家屋にいるような演出を目指した。

 白は汚れが天敵。木材は傷みやすく、社内では反対意見も出た。折り紙の折り目に当たる屋根同士をつなぐ部分は、光を取り込もうと考えたが、ガラスは地震で割れ線路や利用客に当たる危険があり「ご法度」。「鉄道の安全が最優先。100年先も残る駅舎はメンテナンスのしやすさも求められた」と武田さん。

 屋根の主要な部分に採用したのは東京ドームなどで使われている白い膜だった。ガラス繊維にフッ素樹脂を混ぜ、酸化チタンでコーティング。太陽光で汚れを浮かび上がらせて雨で流し落とす優れものだ。

 木材は1年間、屋外に放置する実験を経て、耐久性の高いスギの表面に液体ガラスを塗る組み合わせにたどり着いた。折り目の部分は、揺れに合わせて曲がり、割れても落下しない素材で、光を取り込む構造にした。

 駅周辺は3月導入の羽田空港着陸ルートの直下。建設する4つの高層ビルは上空から「列島」に見える設計になる。武田さんは「今後の駅造りに活用できる知見を生み出せた。お客さまを和の空間で迎えたい」と話す。

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