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AIベンチャー進む優勝劣敗 新技術への期待低下、資金流入も停滞

 国内の人工知能(AI)関連のベンチャー企業が転換期を迎えている。新技術に対する過度な期待の低下に加え、新型コロナウイルス流行に伴う景気悪化で、大企業や投資家からの資金流入が停滞し始めた。有望な企業を舞台にした巨額横領事件も発覚し、今後は投資先の選別が一段と進みそうだ。

 巨額横領事件も

 「彼を信頼していた。こんな事態が起きるとは思わなかった」-。医療用AI開発を手掛けるベンチャー企業「エルピクセル」(東京)の島原佑基社長(32)はうつむき加減に話した。今月9日、会社の口座から現金約29億円を着服したとして、経理担当の元取締役が業務上横領の疑いで警視庁に逮捕された。

 エルピクセルは東大大学院出身の島原氏が2014年に設立した。AIを活用した医療画像の解析ソフトを開発。技術力に定評があり、富士フイルムやオリンパスなどから昨年末までに累計約40億円を調達した。だが、今回の事件で資金の大部分が水の泡となった。

 10年代前半に始まった現在の第4次ベンチャーブームは、金融とITを融合した「フィンテック」やAI関連企業が牽引。業界にはあふれんばかりの巨額の資金が流入した。外部の知見を新事業創出に生かす「オープンイノベーション」が広がり、大企業がベンチャー企業に出資する動きが加速した。

 民間調査によると、19年の国内ベンチャー業界の累計調達額は4462億円に達し、14年の約3倍に急拡大。複数の投資家から100億円の出資を獲得した企業も登場した。

 コロナで“幻滅期”

 だが、今年に入りAIベンチャーを取り巻く環境は大きく変わりつつある。新型コロナの影響が深刻化する中、大企業が本業の立て直しを優先。テレワークや遠隔診療など一部企業には特需はあるものの、ベンチャー業界全体では、流れ込む資金が減少している。

 デロイトトーマツベンチャーサポート(東京)が実施した調査によると、大企業が設立したファンドやベンチャーキャピタル計133社のうち、8割以上が20年の投資額を前年より減らすと回答した。

 大手電機の投資担当者は不祥事が発覚した影響で「一段と投資活動は慎重にならざるを得ない」と打ち明ける。特にAI領域に対する投資家の視線は冷静だ。新技術への市場の期待度は、過剰にもてはやされる「ピーク期」を過ぎ「幻滅期」と呼ばれる下降局面に突入した。

 今後は潤沢な資金を調達できるのは一握りの企業に限られるとみられる。飛ぶ鳥を落とす勢いだったAIベンチャー企業は優勝劣敗が進みそうだ。

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