フジテレビ商品研究所 これは優れモノ

帝人の超極細繊維「ナノフロント」 耐久性グリップ力高め、幅広い分野活用 (1/2ページ)

 外出制限が緩和され、控えていた屋外でのスポーツを本格的に再開する人も多い。この時期は、特に大量の汗をかいたりするので、ウエアの素材にもさまざまな工夫がなされている。今回の「これは優れモノ」は進化する繊維技術について取材した。

 戦後のアパレル業育成

 「最先端の研究で生まれた技術を消費者の手に渡る商品に生かすのが仕事です」と話すのは、帝人のグループ会社で、衣料繊維・産業資材事業などを担っている帝人フロンティア機能資材本部機能資材第二部機能不織布・製品課長の岡田功さん(56)。1987年に帝人に入社以来、繊維の営業一筋でやってきたたたき上げだ。

 帝人は1918年に帝国人造絹絲(けんし)として創業した。日本の化学繊維産業の祖とも言える同社は、高価な天然素材・シルク(絹)の特長である美しい光沢と滑らかな肌触りを人工的に再現したレーヨン(人造絹糸)の生産を開始、以後衣服には欠かせないさまざまな化学繊維を開発してきた。

 「われわれが新たな繊維素材を開発し、それを衣料品メーカーなどに提案してきました」と、岡田さんは帝人などの繊維メーカーが戦後のアパレル産業を育ててきた側面もあると話す。岡田さん自身も、新たな素材ができると、アパレルや商社など衣料品製造に関わる幅広い業種の顧客を訪ね、活用方法の提案を行ってきたという。

 レーヨン製造で地歩を固めた同社は、戦後になると英国の化学メーカーから合成繊維のポリエステルの製造技術のライセンスを取得。日本では「テトロン」という名称で商標登録され、衣類に幅広く用いられるようになった。

 ちなみに、この名称はライセンスを取得した帝人と東レの頭文字からとったものと流布されているが、これは誤り。帝人広報部によると、ポリエチレンテレフタレート繊維の「テ」と「ト」、繊維を意味する「ロン」をかけ合わせた造語とのこと。

 より軽く柔らかな素材に

 ところで繊維は、綿や絹のような天然繊維とレーヨンやポリエステル、ナイロンに代表される化学繊維とに大別される。このうち、レーヨンは紙と同じく木材パルプを原料としているので、再生繊維に分類されている。一方で、ポリエステルやナイロンは、主に石油を原料とすることから合成繊維とも呼ばれている。

 ポリエステル(テトロン)は、ワイシャツやブラウスなどに幅広く用いられ、国内で生産される合成繊維の半分を占めるといわれている。耐久性や速乾性が高く、しわになりにくいというのが特長だ。

 女性のストッキング素材に代表されるナイロンは世界初の合成繊維として1935年に誕生した。ポリエステル同様に丈夫で、しわになりにくく、スキーウエアなどに用いられることも多い。

 「ポリエステルはナイロンに比べてやや、しなやかさに欠けていました」(岡田さん)。そこで同社が取り組んだのが、ポリエステルにより軽く、柔らかな素材感を持たせるための研究開発だった。

 2008年には、ポリエステル繊維の一本一本の直径が700ナノメートル(1ナノメートル=10億分の1メートル)という超極細繊維を創ることで、耐久性、吸水性、速乾性、肌触り、更には高いグリップ力などすべての面で優れた「ナノフロント」の商業生産に世界で初めて成功した。

 「スポーツから医療まで幅広い分野での活用が期待されています」と岡田さんは確かな手応えを感じている。

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