マネジメント新時代

米で第2波警戒、自動車業界3つの懸念

 新型コロナウイルスは依然として猛威を振るっており、感染者は全世界で1100万人を突破、また死者は52万人に達した(4日午後4時現在)。特に、感染者、死者ともに世界最多の米国で感染が再び増加する第2波への警戒感が高まっている。それ以外に、米国では日本自動車業界に悪化をもたらす3つの懸念材料があると考える。第2波が日本の自動車業界に及ぼす影響も考えてみたい。(日本電動化研究所代表取締役・和田憲一郎)

 長びく販売低迷

 米国での3つの懸念材料の1つ目は、自動車販売の長期低落傾向である。新車販売台数は2015年の約1750万台に対し、19年には約1705万台と次第に低下してきた。米国人口が15年の3億2100万人に対し、19年は3億2900万人と微増しているにもかかわらずである。ライドシェア、カーシェアなどの活用増加が一因であろうか。

 2つ目は、乗用車分野のシェア縮小である。米国自動車分野はおおむね2つに分類される。乗用車分野と小型トラック分野である。米国自動車販売における15年の乗用車分野のシェアは約45%であったが、19年には約28%まで減少している。これは、顧客ニーズの変調であり、日本が得意としている小型車、中型セダンなどが好まれず、逆にピックアップトラックなどの分野が伸長してきた。米電気自動車(EV)大手テスラが昨年11月にEVピックアップ「サイバートラック」を発表したのも、これら顧客ニーズを敏感に嗅ぎ取ったためであろう。

 3つ目は、トランプ政権による強権発動である。懸念されていた米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)がこの1日に発効した。トランプ政権による米国回帰を求めた政策であるが、自動車メーカーは10年、20年先を見据えて、メキシコやカナダに工場を建設しており、急遽(きゅうきょ)、米国に工場を移設せよといわれても難しい。このため、ペナルティーとしての関税強化など、対応に苦慮している。

 そのような中、日本の自動車産業は、新型コロナで3~6月は現地生産や輸出ができないなど大きな影響を受けていた。ようやく7月から増産に向けて動き出そうとしていた矢先の第2波である。報道では、6月末時点で、全米50州の約6割に当たる30州以上で、新規感染者が前週より増加し、特にテキサス、フロリダなどの13州は増加率50%を超えるとのこと。フロリダ州では6月末にはバーを閉鎖したり、レストランの営業時間を規制したりするなど、経済活動の再開を一時凍結する動きになっている。

 再び供給網寸断も

 米国内の動きは対岸の火事ではない。6割以上の州での新型コロナの感染者増加は、再び自動車工場や部品メーカーの閉鎖やサプライチェーン(供給網)寸断につながりかねない。販売面でも、顧客と対面商談することもできず、再び販売低下が懸念される。

 筆者の見るところ、この第2波による影響は第1波以上に大きいのではないだろうか。米国では、経済優先だと事業再開するために、離職した従業員などを呼び戻しているであろうし、簡単に再び解雇というわけにはいかない。また、最初の第1波の段階では、やむを得ず工場閉鎖や休業増加に踏み切った企業も、今度の第2波では、いつまで続くのか不透明なため、工場の稼働率も不安定な状態となり、不採算経営が続くように思われる。

 結局、米国では感染者がほぼ抑え込めるまで、本格回復できないのではないだろうか。そうなると、日本の自動車産業は、米国での自動車産業復活は当てにできず、中国、欧州、アジアなどで回復の道を探すことが現実解として望まれるのであろう。

 今回の件で、中国の名言「巧遅は拙速に如かず」を思い出す。一般的には、全体の出来が良くて遅いものよりは、下手だが速いものに及ばないという意味で使われる。しかし、今回は逆に、とにかく遅いより速い方がよいのだと考えて、やみくもに経済優先で早く再開しようと実行した結果、頓挫した例ではないだろうか。

【プロフィル】和田憲一郎

 わだ・けんいちろう 新潟大工卒。1989年三菱自動車入社。主に内装設計を担当し、2005年に新世代電気自動車「i-MiEV(アイ・ミーブ)」プロジェクトマネージャーなどを歴任。13年3月退社。その後、15年6月に日本電動化研究所を設立し、現職。著書に『成功する新商品開発プロジェクトのすすめ方』(同文舘出版)がある。63歳。福井県出身。

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