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「GoTo」観光は政権の賭け 経済重視は感染増と隣り合わせ

 新型コロナウイルスの感染拡大で打撃を受けた業界支援策「Go To キャンペーン」のうち、観光分野の支援事業「Go To トラベル」が、22日に先行して始まる。壊滅的な被害を受けている観光業界の要望もあり、8月上旬予定から前倒しの実施となった。だが、足元で感染者の拡大が止まらない首都圏や近畿圏からの旅行客が、観光地でのクラスター(感染者集団)発生につながれば、経済を優先させた政府へ批判は強まる。チグハグともとれる安倍晋三政権の決断は、大きな“賭け”ともいえる。

 一面のラベンダー畑で知られる北海道富良野市。コロナ前は観光客の8割をインバウンド(訪日外国人客)が占めたが“蒸発”した。ふらの観光協会の峰廻賢(みねまわり・まさる)専務理事は「客足が戻らなければ、ここは大変なことになる」と強調。観光シーズンに間に合った支援策に大きく期待し、感染防止のガイドライン(指針)も作った。

 中小零細が多い観光関連事業者は、手元の運転資金が2~3カ月分という経営が多い。最大200万円の「持続化給付金」も焼け石に水。ある旅行大手の広報担当者は「売り上げゼロの時期が長く、取引先も苦しんでいる」と、「Go To トラベル」の前倒し実施を歓迎する。

 一方、近隣府県在住者を対象に宿泊料金の割引などを展開する兵庫県は、井戸敏三知事が6月の記者会見で「もたもたしている」と、相乗効果が見込める国の支援策の前倒しを求めてきた。だが、東京都などで感染が再拡大するなか「県内の全てが歓迎しているわけではない」(兵庫県内の観光事業者)。首都圏でのPRを抑えたり、「ブレーキとアクセルを調整しながら施策を進める」(県担当者)考えだ。

 上野動物園や浅草など観光地を抱える東京都台東区観光課の担当者も「地方の人は東京を敬遠している」と、22日の支援開始が早すぎると訴える。

 JR東日本は、お盆期間の帰省需要も見越し、新幹線などの割引を実施。日本航空も、国内線の運航便数を8月、7月に比べて大幅に引き上げる。ただ、交通費のみでは、今回の支援策の対象から外れており、需要の押し上げ効果は不透明だ。航空大手関係者は、支援策が観光産業にあたえる一定の効果に期待を寄せながらも、「各地の状況や世の中の情勢を見極めたい」と、感染状況を警戒する。

 今回の「Go To トラベル」の予算規模は約1兆3500億円。過去の宿泊費補助には、平成30年9月に発生した北海道胆振(いぶり)東部地震に伴う北海道ふっこう割がある。地域限定のため単純比較できないが、大和総研の鈴木雄大郎エコノミストによると、仮にふっこう割を全国展開したとして試算しても予算規模は1200億円で、今回の観光支援はその10倍超に上るという。

 経済的には強力な支援策である一方、人の往来を活発にさせて感染拡大につなげる潜在的な威力もその分、含んでいる。

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