リーダーの視点 鶴田東洋彦が聞く

明治安田生命保険(2-1)顧客に生涯寄り添う 10年後描く (1/2ページ)

 明治安田生命保険・根岸秋男社長に聞く

 「MY Mutual Way 2030」。明治安田生命保険が10年後に目指す姿を描いた新たな計画の名称だ。その名の通り「相互会社(Mutual Company)」の強みを生かし、長期にわたって顧客と地域社会、従業員の健康増進を支援するとともに、継続的なアフターフォローにより最も身近なリーディング生保を目指す。根岸秋男社長は、新型コロナウイルスがもたらす危機も「変革期と前向きにとらえ、しなやかに適合する」と強調、フェーズチェンジ(軌道の切り替え)に挑む。

 株式会社化せず

 --新たな10年計画策定の背景は

 「保険金不払いによる不祥事で2005年に受けた2度の行政処分で価値観が変わった。このとき滋賀支社長から急遽(きゅうきょ)、企画部長として本社に戻され松尾憲治社長(当時)を支えた。これが改革の始まりで、顧客が評価することは何でもやり悪いものは壊してきた。顧客第一主義が成長の土台をつくり、戦えるようになった。業績も右肩上がりだ」

 「しかしデジタル化やヘルスケア技術が進展し、金融緩和による異常な低金利が続く。さらに、顧客ニーズの多様化と個性化、それに伴う専門性の深化で軌道の切り替えが必要になり、今までの延長線上にゴールはないと考えるようになった。人口・社会構造の変化は分かっていたが、デジタル化の進展など変革期を迎えている。これまでは高尾山の頂上を目指し、9合目まで登ったが、目指すのは高尾山ではなく富士山ではないかと考え、富士山頂を目指す10年計画を策定した。『Mutual』の言葉を10年計画に入れたことで、株式会社化しないことを宣言した。顧客に対し長期レンジで経営を考える相互会社の価値を評価してもらう取り組みに注力する」

 4分野で抜本改革

 --10年後に目指す姿とは

 「『ひとに健康を、まちに元気を。』最も身近なリーディング生保へ、と設定した。生涯にわたって提供する究極のアフターフォローを通じた社会的価値と、100年先も続く安定した経営による経済的価値の向上を目指す」

 「このうち20~22年度を10年後に目指す姿の実現に向けた成長軌道を確保する3年間と位置づけた。営業・サービス、基幹機能・事務、資産運用、相互会社経営の4分野でフェーズチェンジに向けた制度・インフラなどの抜本見直しを行う。この4大改革と、全社横断的に社会貢献に取り組む2大プロジェクトを策定した」

 --そこにコロナ禍が起きた

 「気持ちよく今年4月にスタートしたが、コロナ禍に伴う環境変化を踏まえ、中期経営計画『MY Mutual Way I期』を1年延期し、20年度は『とことん!アフターフォロー特別計画』を推進することにした。基幹業務の確実な実行と、コロナ禍においても顧客に寄り添ったアフターフォローを提供できる態勢構築を優先する。コロナ禍で人(の知見)とデジタルの融合加速を余儀なくされたので、デジタル化に超高速モードで取り組み、21年度につなげる」

 変革期に前向き 軌道切り替えへ

 --具体的にどう変わるのか

 「顧客との向き合い方を変える。08年のリーマン・ショックや11年の東日本大震災と、今回のコロナ禍によるパンデミック(世界的大流行)は全く違う。命の危険にさらされており、家計への打撃も大きい。しかもワクチン、治療薬ともないので2次、3次の波に襲われるリスクがある。このため新規開拓より既存顧客を守る。苦しい事情を理解して寄り添うことを最優先にする。計画推進に当たり業績目標は設定せず、アフターフォローの進捗(しんちょく)状況を測る指標などを設定し、顧客志向の取り組みを推進する」

 --顧客対応も非対面が中心になるのか

 「対面によるアフターフォローに徹底的にこだわってきたが、非対面のウエートが増える。これまで対面が8割、非対面が2割だった割合が、反対になるかもしれない。営業職員に配布しているタブレット型端末などデジタル機器を駆使して非対面でも顧客に寄り添う姿勢は変わらない。とはいえ対面の伝達力、五感で向き合う力は否定できない。対面と非対面を融合した新たなアフターフォローや活動モデルを確立する」

 --従業員の安全管理は

 「営業職員には『体調が悪ければ特別休暇(有給)を取って休みなさい』といっている。顧客との面談前に検温や手洗いといった事前準備にしっかりと取り組むとともに、顧客と会うときには必ず了解を得ることをルールにしている」

 「優秀な人材確保に向け、営業職員を20年度に1000人増員するほか、2000人規模の契約社員の正社員化にも取り組む。コロナ禍でリストラではなく、保険の知識を持った契約社員の力を顧客志向の取り組みに生かす。正社員化の費用対効果は高く、生産性も上がる。職員の力を認めて伸ばすことで組織力も向上する。モチベーションが上がれば仕事上の視界が広がる。のびのびと働いてほしい」

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