第34回 先端技術大賞

世界のひのき舞台で輝く人材の創出期待 (3/3ページ)

 従来の金属や絶縁体とは位相幾何学的に区別されるある種の「ねじれ」をエネルギー構造に持つトポロジカル物質では、物質表面や端に非散逸な量子化伝導状態が実現できるため、既存技術に変革をもたらす材料として期待されています。本研究では、その中でもエネルギー構造にギャップのないトポロジカル半金属においては、特殊な表面伝導の形成により、従来2次元面でのみ可能であった量子化伝導が3次元方向へ拡張されることを実験的に明らかにしました。

 トポロジカル物質が示す特殊な伝導現象は未だ研究余地が多く残っているものの、既存技術の限界を突破するためのキーファクターの一つとして世界規模で急速に研究が進んでいます。将来的な応用にむけては、理論的進展とともに物質候補のさらなる探索と機能性の開発・改善を行っていく必要があります。今回いただいた賞を励みに、大学院卒業後も新天地で新たな物質系や実験手法を取り入れつつ、トポロジカル物質研究に邁進していく所存です。

 ≪受賞者の喜びの声(学生部門)≫

 フジテレビジョン賞

 国立大学法人 東北大学大学院・阿部結奈さん

 このたびは素晴らしい賞を賜りまして、たいへん光栄に存じます。これまでご指導・ご支援をいただきました皆様に深く感謝を申し上げます。皮膚という最も身近な組織について、新たな側面に光を当てる研究が近年大きく広がっています。デバイス応用に向けた研究はまだ始まったばかりですが、得られた知見を日々の健康や暮らしに少しでも役立てられるよう、今後も研究に邁進いたします。

 ニッポン放送賞

 国立大学法人 名古屋大学大学院・大島優さん

 このたびは「ニッポン放送賞」という大変栄誉ある賞をいただくことができ、驚きとともに大変うれしく光栄に思います。指導教員である松永克志教授をはじめとして、これまで温かくご指導、ご助言いただきましたすべての皆様に、この場を借りて心より感謝申し上げます。今回の受賞を励みとして、今後もより一層精進し、研究活動に精力的に取り組んでいきたいと思います。

 特別賞

 国立大学法人 九州大学大学院・坂本遼太さん

 栄誉ある賞を賜り、大変うれしく思います。指導教官の前多裕介准教授をはじめ、これまでご指導いただきました共同研究者の方々に心より感謝いたします。科学の面白さは、世界についての新しい理解の1ピースを、自ら発見できるところにあります。科学者はその1ピースが既存の世界にどう繋がるかを考え、新しい世界の姿を描くのです。この受賞を励みに、科学の面白さ、奥深さを広く社会に発信できるよう、今後も精進する所存です。

 特別賞

 国立高等専門学校機構 徳山工業高等専門学校・藤井一貴さん

 このたび、深層生成ネットワークの一種であるGANに対して人間の評価を組み込む新たな枠組みの研究成果を高く評価していただき、特別賞を受賞できたことを非常に嬉しく思っております。指導教員の宮崎亮一准教授をはじめ、本研究の実現に際して今までご指導いただきました皆様や、評価していただいた審査員の皆様に深く感謝申し上げます。この賞を励みに、今後も熱心に研究活動に取り組んで参ります。

【用語解説】先端技術大賞

 先端技術の研究に励む若者の独創性を育み、勉学・研究への意欲を高め、世界のひのき舞台で活躍する人材を創出するのが狙い。理工系の学生を対象に1987年に創設した「独創性を拓く先端技術学生論文」表彰制度を2002年に全面刷新し、企業の最前線で活躍している若手研究者、技術者にも対象を広げ、「学生部門」と「社会人部門」の2本立てにした。後援は文部科学省、経済産業省、フジテレビジョン、産経新聞社、ニッポン放送。

                  ◇

 ※受賞論文はウェブサイトで公開中。http://www.fbi-award.jp/

★=十の下にくさかんむり、その下に木

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